築古アパートを所有していると、「多少古くても家賃は入っている」「今すぐ困っていない」という理由から、出口戦略を後回しにしてしまいがちです。
しかし、築古物件ほど時間の経過とともに選択肢が静かに、確実に減っていくという特徴があります。
売却、建て替え、保有継続、どの選択肢を取るにしても、「まだ動ける状態」で考え始めることが重要です。
本記事では、築古アパートが“売れなくなる前”に、オーナーが整理しておくべき出口戦略の考え方を解説します。
この記事の3行まとめ
- 築古アパートは時間の経過とともに売却や選択肢が確実に減っていく資産
- 「まだ黒字」のうちに、売却・保有・再生といった出口戦略を整理しておくことが重要
- 売れなくなる前に動けるかどうかが、最終的な資産価値と結果を大きく左右する
目次
- 築古アパートは“いつでも売れる”わけではない
- 「まだ黒字」は出口を考えなくていい理由にならない
- 出口戦略①:収益物件として売却する
- 出口戦略②:更地・土地として売却する
- 出口戦略③:建て替え・再生して保有を続ける
- 「売れなくなる前」にやっておくべき準備
- 今こそ立ち止まって考える理由
築古アパートは“いつでも売れる”わけではない

不動産は現物資産である以上、株や投資信託のようにいつでも簡単に換金できるものではありません。
特に築古アパートは、築年数が進むほど買い手の母数そのものが減っていく傾向があります。
理由の一つが金融機関の融資姿勢です。築30年、40年を超えると、建物評価がほぼゼロになり、融資期間が極端に短くなる、もしくは融資自体が難しくなります。
結果として、現金購入できる投資家や一部の法人にしか売れなくなり、価格交渉でも不利になりやすくなります。
「売ろうと思えば売れるだろう」という感覚は、築古アパートでは通用しないケースが増えているのが実情です。
「まだ黒字」は出口を考えなくていい理由にならない

毎月の収支がプラスであれば、経営がうまくいっているように感じます。
しかし、築古アパートの場合、その黒字は将来のリスクを先送りしているだけという可能性もあります。
例えば、
・給排水管の交換
・外壁・屋根の全面補修
・共用部設備の更新
これらは築年数が進むにつれて避けられません。
しかも、修繕は一つずつではなく、重なるように発生することが多いのが特徴です。
修繕費が増え始めてから売却を検討しても、その時点では利回りが下がり、買い手から見た魅力も低下しています。
「黒字だから安心」ではなく、「今の黒字はいつまで続くのか」を考えることが出口戦略の第一歩です。
出口戦略①:収益物件として売却する

築古アパートの出口戦略として最も現実的なのが、家賃収入が安定しているうちに収益物件として売却する方法です。
この場合、価格を左右するのは築年数よりも「収益の再現性」です。
具体的には、
・直近数年の入居率
・家賃下落の有無
・修繕履歴が整理されているか
といった点が重視されます。
築古であっても、管理状態が良く、将来の見通しが立てやすい物件は一定の需要があります。
逆に、「修繕はその都度対応してきたが記録がない」「今後の修繕予定が把握できていない」状態では、買い手はリスクを価格に反映させてきます。
出口戦略を考えるなら、売る・売らないに関わらず情報整理は必須です。
出口戦略②:更地・土地として売却する

建物の老朽化が進み、収益物件としての魅力が薄れてきた場合、建物を評価せず土地として売却するという選択肢もあります。
特に立地が良いエリアでは、建物が残っていることがマイナスになることさえあります。
ただし、この出口戦略では解体費用が大きな論点になります。
・解体費を自己負担するのか
・買主が解体前提で購入してくれるのか
によって、手残りは大きく変わります。
「土地として売れるかどうか」は、周辺の取引事例を含めて早めに確認しておくことが重要です。
出口戦略③:建て替え・再生して保有を続ける

立地条件が良く、将来的な賃貸需要が見込める場合は、建て替えや大規模リノベーションという選択肢も考えられます。
ただし、これは出口戦略というよりも経営を延長する判断に近いものです。
重要なのは、
・投下資金を何年で回収できるのか
・自身の年齢や今後の資金計画に合っているか
を冷静に判断することです。
「思い入れがあるから」「まだ使えるから」という理由だけでの建て替えは、出口をさらに難しくする可能性があります。
「売れなくなる前」にやっておくべき準備

出口戦略は、決断そのものよりも事前準備の質が結果を左右します。
慌てて判断すると、本来選べたはずの選択肢を失いかねません。
今のうちに、次の点だけは整理しておきたいところです。
・現在の市場価格を把握する
・金融機関の評価や融資条件を確認する
・収支表と修繕履歴を整理する
・複数の出口シナリオを想定する
これらを把握しておくだけでも、「売る・持つ・直す」の判断が格段にしやすくなります。
何も起きていない今こそが、出口戦略を考える最適なタイミングです。
今こそ立ち止まって考える理由

築古アパートの出口戦略は、限界が見えてから考えるものではありません。
まだ売れる、まだ選べる段階で考えるからこそ、納得のいく出口を選べるのです。
家賃収入が入っている今は、経営が安定しているように見える一方で、将来の判断を先送りしやすい時期でもあります。
だからこそ一度立ち止まり、数年後、10年後の姿を冷静に想像してみることが大切です。
築古アパートが売れなくなる前にどう動けるか、その差が、最終的な資産価値や手元に残る結果を大きく分けることになります。