この記事の3行まとめ
- マンション投資で相続税評価額が下がる
- 賃貸や特例でさらに節税につながる
- 2024年改正と否認リスクに注意
「マンション投資が相続税対策になる」と聞いたことがあるかもしれません。
現金をそのまま残すよりも不動産に組み替えた方が、相続税の計算で有利になるケースが多くあります。ただし、2024年から区分所有マンションの評価方法が見直され、以前ほど単純な話ではなくなっています。
この記事では、マンション投資が節税につながる仕組みと注意点を解説します。
マンション投資が相続税対策になる3つの理由

マンション投資が相続税対策として注目される理由は、相続税の計算で使われる「評価額」にあります。現金はそのままの金額で課税される一方、不動産は実際の売買価格よりも低い金額で評価されるのが特徴です。
賃貸に出したり特例を活用したりすれば、評価額はさらに圧縮できるでしょう。ここでは、節税につながる3つの仕組みを順に見ていきます。
①現金より評価額が下がる仕組み
相続税の計算では、不動産は売買価格ではなく、国が定めた基準で評価されます。土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」が基準です。路線価は公示地価の約8割、固定資産税評価額は時価の約5割に設定されています。
たとえば5,000万円の現金と、5,000万円で購入したマンションを比べると、評価額には大きな差が生まれます。以下の表で確認してみましょう。
| 資産の種類 | 購入額/保有額 | 相続税評価額の目安 | 圧縮率 |
| 現金 | 5,000万円 | 5,000万円 | 0% |
| マンション(自己使用) | 5,000万円 | 約2,500万円〜3,500万円 | 30〜50% |
| マンション(賃貸中) | 5,000万円 | 約1,750万円〜2,450万円 | 50〜65% |
このように、現金を不動産に組み替えるだけで評価額が3〜5割下がります。賃貸に出せばさらに圧縮され、節税効果は一段と高まります。
②賃貸に出すと評価額がさらに下がる
マンションを第三者に貸すと、所有者は自由に使ったり売ったりできなくなります。
この「使い方の制限」が評価額に反映される仕組みです。
具体的には、土地は「貸家建付地」として評価されます。計算式は次のとおりです。
貸家建付地の評価額=自用地評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
借地権割合は地域によって60〜70%が一般的で、借家権割合は全国一律30%です。満室であれば、土地の評価額はおよそ2割下がります。建物も同様に、固定資産税評価額から借家権割合と賃貸割合に応じた減額が受けられます。
つまり、マンションを購入して賃貸に出すだけで、土地と建物の両方の評価額を引き下げ
られるわけです。
③小規模宅地等の特例で土地の評価額が半減する
賃貸用不動産の土地には「小規模宅地等の特例」が使える場合があります。この特例を適用すると、200平方メートルまでの部分について評価額が50%減額されます。
ただし、相続開始から3年以内に新たに賃貸を始めた物件には適用されません。節税を目的にマンション投資を検討するなら、できるだけ早い段階で始めておく必要があります。
なお、自宅の土地にもこの特例は適用でき、そちらは330平方メートルまで80%の減額となります。自宅と賃貸用を併用する場合は面積の上限に制約があるため、どちらに優先して適用するかは税理士と相談しましょう。
相続目的のマンション投資で失敗しないための注意点

マンション投資は有力な相続税対策ですが、制度改正や税務署の判断によって想定どおりの節税効果が得られないケースもあります。
ここでは、投資判断の前に知っておくべき2つのリスクを解説します。
2024年改正で節税効果はどう変わったか
2024年1月1日以降に相続・贈与で取得した区分所有マンションには、新たな評価ルールが適用されています。「区分所有補正率」という補正が加わり、相続税評価額が引き上げられました。
改正前と改正後の違いを整理すると、次のとおりです。
- 改正前:タワーマンションは市場価格の3〜4割程度で評価されるケースが珍しくなかった
- 改正後:市場価格の6割を下回らない水準に補正される仕組みに変更された
- 補正率の算定要素:築年数、総階数、所在階、専有面積など
国税庁が専用の計算明細書を公開しているので、購入前にシミュレーションしておくと安心です。
改正後も不動産は現金より評価額が低い点は変わりませんが、以前ほど大きな差は出にくくなっています。「マンションを買えば大幅に節税できる」という認識は修正が必要でしょう。
税務署に否認されるケースとは
相続税対策として購入したマンションの評価額が、税務署から認められないケースがあります。通常は路線価などで評価しますが、市場価格と著しく乖離する場合は実勢価格での評価を求められます。
令和4年の最高裁判決では、相続直前に購入したマンション2棟の路線価評価が否認されました。判決の要旨は、「節税を目的とした購入であり、他の納税者との公平性を著しく害する」というものです。
否認されやすいケースには共通する特徴があります。
- 相続直前に購入している
- 借入金と組み合わせた過度な節税スキームになっている
- 購入後すぐに売却している
こうしたリスクを避けるには、以下の点を意識しましょう。
- 相続が見込まれる数年前から計画的に購入する
- 節税だけでなく、家賃収入など投資としての合理性を確保する
- 購入・運用・売却の記録を残し、投資目的を説明できる状態にしておく
まとめ|マンション投資で相続対策を始める前に確認すべきこと

マンション投資は、評価額の圧縮効果によって相続税を抑えられる有力な手段です。賃貸に出せば評価額はさらに下がり、小規模宅地等の特例も活用できます。
一方で、2024年の制度改正や税務署の否認リスクを考慮すると、「買えば必ず節税できる」とは言い切れません。まずは親の資産の総額と相続税の見込み額を把握したうえで、相続に強い税理士に相談してみましょう。
早い段階で動くことが、家族の資産を守る第一歩です。