この記事の3行まとめ
- 2025年区分所有法改正で老朽化マンションの合意形成が容易になり所有者不明問題にも対処可能に
- 建て替えや共用部分変更の決議要件が緩和され、出席者多数決による運営も可能になる
- 管理組合は規約見直しや情報収集、専門家連携を早急に進めるべき
区分所有法改正の背景と必要性

「マンションの高経年化」と「居住者の高齢化」という「2つの老い」が同時進行する中、従来の区分所有法では対応しきれない課題が増えています。
老朽化マンションでは設備劣化や外壁損傷が進み、相続放置による所有者不明住戸の増加や非居住所有者の存在で合意形成が困難になっているのが現状です。また、災害で被災したマンションの再建も進まない実情があります。
これらの課題に対応するため、令和7年5月に「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、令和8年4月から施行される運びとなりました。
改正の主なポイント

管理組合の運営に直接影響する重要な変更点を、3つの視点から解説します。
所有者不明問題への対応
改正法では、裁判所への申立てにより、一定期間連絡が取れない所有者を議決権の母数から除外できるようになりました。これにより、必要な決議が停滞せずに進められるようになります。
決議要件の緩和
| 決議事項 | 現行の要件 | 改正後の要件 | 特記事項 |
| 普通決議 | 出席者の過半数 | 出席者の過半数 | 変更なし |
| 規約の設定・変更・廃止 | 区分所有者・議決権の4分の3以上 | 出席者の過半数(定足数は過半数) | 会議の要領が必要 |
| 共用部分の重大変更 | 区分所有者・議決権の4分の3以上 | 出席者の過半数(定足数は過半数) | 会議の要領が必要 |
| 共用部分の変更(バリアフリー不適合など) | 区分所有者・議決権の4分の3以上 | 区分所有者・議決権の3分の2以上 | 要件緩和 |
| 建て替え(一般) | 区分所有者・議決権の5分の4以上 | 変更なし | - |
| 建て替え(耐震性不足など) | 区分所有者・議決権の5分の4以上 | 区分所有者・議決権の4分の3以上 | 特定要件を満たす場合 |
| 一棟リノベーション・解体 | 全員の同意 | 区分所有者・議決権の5分の4以上 | 大幅な要件緩和 |
| 一棟リノベーション・解体(問題あり) | 全員の同意 | 区分所有者・議決権の4分の3以上 | 特定要件を満たす場合 |
合意形成を容易にするため、複数の決議要件が緩和されました。決議事項ごとの変更点を表にまとめました。規約変更に必要な賛成数が大幅に緩和され、出席者の過半数の賛成で決議できるようになりました。
マンション再生の円滑化
老朽化マンションの再生を促進するため、「マンション取壊し敷地売却事業」と「マンション更新(一棟リノベーション)事業」が新設されました。前者は老朽化マンションを取り壊して敷地を売却する際、後者は建物の構造体を残したまま大規模改修を行う際に活用でき、いずれも一定の多数決で決議が可能となります。
また、隣接地を含めた建て替えや、借地権付きマンションの建て替えも容易になりました。
管理組合が今すべき対策

法改正を機会と捉え、今から計画的に準備を進めることが重要です。
法改正の情報収集と理解
正確な情報を入手し、理事会や組合員全体で共有しましょう。国土交通省や法務省の資料、説明会に積極的に参加することをお勧めします。
規約・細則の点検と見直し
法改正に合わせて管理規約や使用細則を見直しましょう。特に決議要件や災害時対応、所有者不明問題への対処方法は早急に検討が必要です。
合意形成の準備
情報共有の仕組みを整えることも重要です。グループLINEや情報共有システムを導入すれば、所有者間の意見交換や資料共有が迅速に行えます。
専門家との連携
マンション管理士、弁護士、建築士などの専門家と連携し、必要に応じて相談できる体制を整えておきましょう。専門家の助言により、誤った解釈や対応の遅れを防げます。
まとめ

2025年の区分所有法改正は、老朽化マンションの課題に対応するための重要な制度改革です。所有者不明問題への対応、決議要件の緩和、マンション再生の円滑化など、実務的な改正内容となっています。
管理組合にとって、この法改正は「壁」ではなく「転換機」です。今から準備を進め、情報収集や規約見直し、専門家との連携を図ることで、法改正を追い風とする体制づくりが可能になります。持続可能なマンション管理のために、今こそ管理組合が主体的に動き出す時です。