【記事の要点】
- 内容証明で証拠を残し、5年の時効成立を確実に阻止する
- 少額訴訟や支払督促を活用し、費用を抑えて債務名義を取る
- 規約改正と総会決議を経て、組織として迷わず法的措置を講じる
「管理会社に任せているのに滞納が解消されない」と悩んでいませんか。ただ待つだけの対応では、時効により大切な管理費が消滅してしまうリスクがあります。解決には、理事会が主導して期限を設け、法的手続きへ着実に移行することが不可欠です。
この記事では、実務的な督促手順から少額訴訟、競売請求といった法的措置まで、理事長がとるべき解決策を具体的に解説します。
管理費滞納への初動対応|理事長が踏むべき具体的な実務手順

滞納発生時は、直ちに事実確認を行いましょう。 対応が遅れると、滞納額の増加や住民のモラル低下を招きます。
ここでは、法的手段の前に理事会ができる具体的な督促実務を解説します。 まずは状況を把握し、証拠を残しながら着実に支払いを求めていきましょう。
現状把握と電話・訪問による任意の支払請求
滞納確認後、まずは管理会社を通じて口座残高不足などのミスがないか確認します。連絡がつかない場合は訪問を行いますが、威圧的な態度は避け、以下の点を記録してください。
- 支払いの意思の有無
- 具体的な支払可能時期
- 連絡がつく時間帯
この記録は、法的措置の際に誠意ある対応をした証明となります。 不在時も接触を試み続け、感情を挟まず業務として淡々と進めましょう。
内容証明郵便の送付と時効の中断措置
電話や訪問に応じない場合は、内容証明郵便を利用して支払いを求めます。これには主に以下の効果があります。
- 証拠能力:「誰が・いつ・何を」送ったか公的に証明できる
- 心理的効果:日本郵便の認証がある書面でプレッシャーを与える
- 時効対策:催告により時効の完成を6ヶ月間猶予させる
特に重要なのが「時効対策」です。管理費の消滅時効は5年ですが、催告により時間を稼ぎ、その間に法的措置をとることで時効をリセットできます。文面には滞納額と期限を明記し、法的措置を講じる旨を記載して本気度を伝えましょう。
支払期限を過ぎた場合の連帯保証人や共有者への請求
本人からの回収が困難な場合、法的な支払い義務を持つ他の人物へ請求を行います。
主に以下の人物が対象となります。
- 物件を共有名義で所有している配偶者や親族
- 駐車場契約時の連帯保証人
- 相続発生時の法定相続人(全員)
相続時は戸籍で相続人を特定し、親族が支払う場合はすぐに「債務承認弁済契約書」を交わします。本人回収が困難な場合は、共有者や連帯保証人へ請求しましょう。
法的措置による完全回収|支払督促から競売請求までの実行手順

任意の督促に応じない場合は、迷わず法的手続きへ移行します。 これ以上の放置は、真面目に支払っている住民への裏切りになりかねません。 ここでは、費用と時間を考慮し、管理組合が選ぶべき最適な手段を解説します。
少額訴訟と支払督促|費用を抑えた法的手続き
滞納額60万円以下なら「少額訴訟」、金額制限のない「支払督促」が有効です。 どちらも弁護士を立てずに本人訴訟として行うことが可能で、費用対効果に優れています。
両者の主な違いは以下の通りです。
| 手続き名 | 対象金額 | 主な特徴 | メリット |
| 少額訴訟 | 60万円以下 | 原則1回の審理で判決 | 解決が早く、即日結審も可能 |
| 支払督促 | 上限なし | 書類審査のみ(出廷不要) | 裁判所に行く手間がない |
これらの手続きで債務名義を取得すれば、次の強制執行へスムーズに移行できるため、まずはこの段階を目指すのが賢明です。
強制執行と区分所有法59条による競売請求
判決等が出ても支払いがない場合、裁判所に「強制執行」を申し立て、以下の財産を差し押さえます。
- 給与
- 銀行預金
- 所有不動産(部屋そのもの)
差し押さえる財産がない、あるいは滞納者が共同生活の維持を困難にしている場合は、区分所有法59条に基づく「競売請求」を行います。 これは滞納者の所有権を強制的に失わせ、退去させる強力な措置です。
実施には以下の厳格な要件が必要です。
- 他の方法では障害を除去できないこと
- 総会での特別決議(4分の3以上の賛成)
- 滞納者への弁明の機会の付与
ハードルは高いですが、悪質な滞納を根本から解決する最終手段として極めて有効です。
弁護士費用の負担と理事会決議の重要性
弁護士費用は、規約で「滞納者負担」と明記しておく必要があります。 古い規約では組合負担になるリスクがあるため、事前に確認し、必要なら改正を決議しましょう。
また、法的措置の実行も総会を経ることで、全員の総意という後ろ盾を得られます。 透明性の高い進め方が、理事長の負担を減らし結束を強めます。
まとめ|迷いのない対応でマンションの資産価値を守り抜く

マンション管理費の滞納問題は、早期かつ適切な手順を踏めば必ず解決できます。重要なポイントは以下の3点です。
- 初期対応:内容証明等で証拠作りを徹底し、時効を阻止すること
- 法的措置:少額訴訟や支払督促など、費用対効果の高い手続きで債務名義を取ること
- 組織対応:弁護士費用ルールを整備し、総会決議を経て組合一丸となって立ち向かうこと
「誰かがやってくれる」ではなく、理事会がすぐに動くことで、マンションの資産価値を守ることができます。