賃貸経営で火災保険の必要性や経費計上方法に悩んでいませんか?
本記事では、「火災保険の基礎知識」「加入メリット」「経費計上の正しい方法」の3つのポイントを解説するほか、保険料相場や特約選びも紹介。
安定した賃貸経営で資産を守りたいオーナーは必見です!
目次
- 賃貸経営における火災保険の基礎知識
- 火災保険の補償対象となる建物と家財
- オーナーと入居者の保険加入責任の違い
- 融資条件としての火災保険加入義務
- 賃貸オーナーが火災保険に加入するメリット
- 建物損害リスクから資産を守れる
- 賠償責任リスクに備えられる
- 家賃収入の減少リスクをカバーできる
- 火災保険を経費として計上する方法
- 火災保険の補償対象となる建物と家財
- オーナーと入居者の保険加入責任の違い
- 融資条件としての火災保険加入義務
1.賃貸経営における火災保険の基礎知識

賃貸経営を成功させるために、火災保険の基本的な仕組みを理解することが重要です。
補償対象や責任範囲、融資との関係について詳しく解説します。
1)火災保険の補償対象となる建物と家財
火災保険の補償対象は「建物」と「家財」の2つに分かれ、オーナーが加入する保険は原則として建物部分をカバーします。
建物部分には、建物本体や門・塀、物置などの付属建物、さらに畳・建具・浴槽などの建物に付属する設備が含まれます。
一方、入居者の家具や電化製品などの動産は家財に分類され、入居者自身が火災保険に加入して保護するのが一般的です。
この区分を理解しておくことで、保険の重複や補償の空白を避けられます。
2)オーナーと入居者の保険加入責任の違い

オーナーと入居者では、加入すべき保険の種類と責任範囲が明確に異なります。
オーナーは建物の所有者として、火災や自然災害による建物損害に対する火災保険への加入が必要です。
これに対し入居者は、自分の家財を守る家財保険と、貸主への損害賠償に備える借家人賠償責任保険への加入が求められます。
また入居者が原因で近隣住民に迷惑をかけた場合の個人賠償責任保険も重要です。
この責任分担を契約書に明記し、入居者に適切な保険加入を促すことで、トラブルを未然に防げます。
3)融資条件としての火災保険加入義務
不動産投資ローンを利用してアパートやマンションを購入する場合、金融機関は必ず火災保険への加入を融資条件として設定します。
これは担保物件である建物が火災や自然災害で損害を受けた際、ローン残債の回収リスクを軽減するためです。
保険金額は融資額と同程度に設定され、質権設定により保険金の受取人が金融機関に指定されることが多いです。
保険契約を怠ったり解約したりすると、ローン契約違反となり一括返済を求められる可能性があるため、融資期間中は継続的な保険加入が必須となります。
賃貸オーナーが火災保険に加入するメリット

火災保険は単なる融資条件ではなく、賃貸経営に伴う様々なリスクから資産を守る重要な手段です。
建物損害、賠償責任、収入減少の3つの観点からメリットを説明します。
1)建物損害リスクから資産を守れる
火災保険に加入することで、火災だけでなく風災・雹災・雪災などの自然災害による建物損害を幅広くカバーできます。
例えば台風による屋根の損傷や、落雷による電気設備の故障なども補償対象となり、高額な修繕費用の負担を軽減できるのです。
特にアパートやマンションの場合、屋根や外壁の修理には数百万円の費用がかかることもありますが、火災保険があれば保険金で対応可能です。
また水災補償を付帯すれば、集中豪雨による床上浸水の損害も補償されます。
建物は長期間にわたって収益を生み出す重要な資産であり、火災保険による保護は安定した賃貸経営の基盤となります。
2)賠償責任リスクに備えられる

賃貸物件の管理・運営中に発生する第三者への賠償責任リスクに対応できることも、火災保険の重要なメリットです。
施設賠償責任特約を付帯することで、建物の欠陥や管理上の不備により入居者や通行人にけがをさせた場合の損害賠償をカバーできます。
具体例として、階段の手すりが壊れて入居者が転倒した場合や、外壁の一部が剥がれて通行人に当たった場合の治療費・慰謝料などが該当します。
現代社会では賠償責任を問われるケースが増加しており、数千万円の賠償金を請求されることも珍しくありません。
火災保険の特約で備えておくことで、予期しない高額な賠償請求からも身を守ることができます。
3)家賃収入の減少リスクをカバーできる
火災や災害により建物が損傷し、入居者が退去を余儀なくされた場合の家賃収入減少もカバーできます。
家賃補償特約を付帯することで、修復期間中の家賃収入や、入居者の一時的な転居費用を補償してもらえるのです。
例えば火災により3戸のうち2戸が住めなくなった場合、修復に3か月かかると月額家賃12万円×2戸×3か月で72万円の収入減となりますが、この損失を保険金で補填できます。
特に借入金の返済がある物件では、家賃収入が途絶えると返済に支障をきたす恐れがあるため、家賃補償特約は経営安定化の重要な手段といえます。また入居者の引っ越し費用も補償されるため、関係維持にも効果的です。
火災保険を経費として計上する方法

火災保険料は賃貸経営の必要経費として計上でき、適切な処理により節税効果が期待できます。計上ルールと注意点を詳しく解説します。
1)火災保険料の経費計上ルール
賃貸物件にかける火災保険料は、不動産所得の計算において損害保険料として経費計上が可能です。
1年契約の場合は支払った年度の全額を経費とし、複数年契約の場合は契約期間に応じて按分計算を行います。
例えば5年契約で50万円を一括払いした場合、年間10万円ずつを5年間にわたって経費計上します。
ただし自宅併用物件の場合は、賃貸部分の面積割合に応じて按分し、自宅部分は経費算入できません。
また保険金を受け取った場合は、その年度の収入として計上する必要があります。
正確な経費計上により、所得税・住民税の節税効果が期待でき、キャッシュフローの改善につながります。
2)長期契約時の前払保険料処理

火災保険を複数年契約で一括払いした場合の前払保険料は、適切な会計処理が必要です。
支払時に全額を経費計上するのではなく、「前払費用」として資産計上し、各年度の経過に応じて「損害保険料」として費用化します。
例えば5年契約60万円を2024年に支払った場合、支払時は前払費用60万円を計上し、毎年12万円ずつを損害保険料として経費計上するのです。
この処理により、各年度の損益が適正に表示され、税務上の問題も回避できます。
また契約期間中に建物を売却した場合は、未経過期間分の保険料を損失として計上できます。
長期契約は割引メリットがありますが、適切な会計処理を行うことが重要です。
3)確定申告での注意点
確定申告時の火災保険料計上では、いくつかの注意点があります。
まず領収書や保険証券などの証拠書類を必ず保管し、税務調査に備えましょう。
複数年契約の場合は按分計算の根拠を明確にし、計算過程を記録しておくことが大切です。
また保険金を受け取った年は、修繕費などの支出と保険金収入を適切に区分して申告する必要があります。
さらに建物と家財の保険料が混在している場合は、賃貸経営に関する部分のみを経費として計上します。
青色申告の場合は青色申告決算書の「損害保険料」欄に記入し、白色申告では収支内訳書に記載してください。
不明な点は税理士に相談し、適正な申告を心がけることが重要です。