【FP監修】不動産投資で相続対策をする賢い方法を徹底解説

【FP監修】不動産投資で相続対策をする賢い方法を徹底解説

【3行まとめ】
① 現金を不動産に換えると相続税評価額が時価の約3〜5割まで圧縮でき、賃貸化と借入でさらに節税効果が高まる。
② 物件選びは「評価額と時価のギャップ」「収益性」「換金性」の3軸で判断し、節税だけに偏らないことが重要。
③ 行き過ぎた節税は税務署に否認されるリスクがあり、相続人同士のトラブル防止策とあわせて専門家への相談が必須。

不動産投資を相続対策に活用したいけれど、「本当に節税効果はあるの?」「何から手をつければいいの?」と不安に感じていませんか。大切な家族にできるだけ多くの資産を残したい——その思いは、資産を築いてきた方であれば誰もが抱くものです。

この記事では、ファイナンシャルプランナーの視点から、不動産投資がなぜ相続税対策に有効なのか、その仕組みから具体的な節税効果のシミュレーション、賢い物件選びの方法、そして税務署に否認されないための注意点まで徹底的に解説します。数字や費用感を交えながら、実務に役立つ情報をまとめました。最後まで読めば、将来の相続に対する不安を解消し、納得して一歩を踏み出せるはずです。

目次

なぜ不動産投資が相続税対策に有効なのか?仕組みを徹底解説

老後の生活や家族への資産承継を考えたとき、多くの方が「相続税の負担はどのくらいになるのか」と不安を抱きます。実際、2015年の相続税制改正で基礎控除額が引き下げられて以降、相続税の課税対象となる人の割合は約2倍に増加し、現在では亡くなった方の約9〜10%が課税対象となっています(国税庁「相続税の申告事績の概要」)。

不動産投資は、こうした相続税の悩みを解決する有効な手段のひとつです。現金や有価証券とは異なり、不動産には税法上の特別な評価方法が定められており、その仕組みを正しく理解して活用することが、大切な資産を守ることにつながります。まずは、不動産投資が相続税対策になる3つの理由を分かりやすく解説します。

① 現金を不動産に変えるだけで評価額が下がる

相続税の計算では、保有する財産の種類によって評価方法が異なります。現金・預金は額面どおりに評価されるため、1億円持っていればそのまま1億円が課税対象です。一方、不動産は「相続税評価額」という独自の基準で評価され、これは市場価格(時価)よりも低く設定されています。

  • 土地:路線価方式で評価され、時価のおおむね70〜80%程度になるのが一般的
  • 建物:固定資産税評価額で評価され、時価(建築費)のおおむね50〜70%程度になることが多い

つまり、同じ1億円の資産でも、現金のまま持つか不動産に換えるかで、相続税の課税対象額に大きな差が生まれるのです。

出典:国税庁「財産評価基本通達」/ゼロリノベ「路線価とは|正しく相続税を算出するために気をつけること4つ」(2025年1月)

② 賃貸に出せばさらに評価額を大幅に減らせる

不動産投資の真価は、賃貸に出すことで評価額をさらに下げられる点にあります。相続税の計算では、他人に貸している不動産(賃貸不動産)は、自分で使う不動産(自用不動産)よりも評価が低くなるルールがあるためです。具体的には以下の通りです。

区分評価の考え方評価減の目安
貸家(建物)固定資産税評価額×(1−借家権割合30%×賃貸割合)最大約30%減
貸家建付地(土地)自用地評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)約15〜20%減
※借地権割合・賃貸割合により変動します

建物を賃貸に出すと借家権割合(全国一律30%)分が控除され、土地は「貸家建付地」として評価が下がります。賃貸収入を得ながら相続税の節税効果も高められるのは、不動産投資ならではの大きな魅力です。さらに一定の要件を満たせば、「小規模宅地等の特例」により貸付事業用宅地として200㎡まで評価額を50%減額できる可能性もあります。

③ 借入を利用すると相続財産を圧縮できる

相続税対策として不動産を購入する場合、銀行融資(借入金)を利用するのが一般的です。相続税は「プラスの財産(資産)−マイナスの財産(債務)」が課税対象となるため、不動産購入のために借りたローン残高は債務控除として差し引けます。

たとえば、1億円の不動産を借入金1億円で購入した場合、購入直後はプラス財産(不動産評価額)が約5,000万円前後まで圧縮される一方、マイナス財産(借入金)が1億円あるため、相続財産全体を大きく圧縮できます。

ただし、借入には金利・返済負担・空室リスクが伴います。また、行き過ぎた節税目的とみなされると税務署に否認される可能性もゼロではありません。この点は後半の注意点で詳しく解説します。

賢い人と知らない人の違いを示す不動産投資の相続対策イメージ

【シミュレーション】現金1億円と不動産の相続税はこれだけ違う

仕組みを理解したところで、実際にどれだけ節税効果があるのかを具体的な数字で見てみましょう。ここでは「相続人が子1人」「基礎控除3,600万円(3,000万円+600万円×1人)」という前提で、1億円を①現金のまま持つ場合、②自宅用不動産を購入した場合、③賃貸用不動産を購入した場合を比較します。

ケース相続税評価額(概算)課税対象額相続税額(概算)
① 現金1億円約1億円約6,400万円約1,220万円
② 自用不動産1億円約7,000万円約3,400万円約500万円
③ 賃貸不動産1億円約5,000万円約1,400万円約160万円
※評価額・税額はあくまで一例。物件・地域・特例適用により大きく変動します

このように、同じ1億円でも現金のまま持つより賃貸不動産に換えるだけで、相続税額が約1,220万円から約160万円へと、おおよそ1,000万円以上の差が生じる可能性があります。さらに借入を併用すれば、相続財産全体をより圧縮できるケースもあります。

ただし、これは概算であり、実際の税額は不動産の所在地・築年数・賃貸割合・小規模宅地等の特例の適用可否などによって変わります。正確な試算は、税理士やファイナンシャルプランナーへの相談が不可欠です。

相続対策で成功する不動産投資の選び方3つのポイント

相続対策のために不動産投資を始める際、「どんな物件を選べばいいのか」と悩む方は多いものです。実は、どんな物件でもよいわけではありません。節税効果ばかりに注目して高額物件を購入し、後から「空室が増えてローン返済が厳しくなった」と後悔するケースも少なくありません。相続対策という長期視点を持つなら、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。

① 時価と評価額のギャップが大きい不動産を選ぶ

節税効果は「時価と相続税評価額の差」が大きいほど高まります。一般的に、以下のような物件はギャップが大きくなる傾向があります。

  • 都心部の好立地で、路線価と実勢価格に大きな差がある土地
  • 建物比率が高い区分マンション・タワーマンション
  • 建築費がかさむRC造(鉄筋コンクリート造)の賃貸物件

② 収益性(利回り)の高い物件を見極める

節税効果だけを追い求めて空室だらけの物件を購入すると、賃料収入でローンを返済できず、相続前に資産が目減りしてしまいます。実質利回り(年間家賃収入−諸経費÷物件価格)を確認し、エリアの賃貸需要・人口動態・築年数を踏まえた現実的な収支計画を立てましょう。目安として、ワンルームマンションなら実質利回り3〜4%以上、地方アパートなら6〜8%以上が一つの基準です。

③ 換金性(流動性)の高い物件を選ぶ

相続税は原則として現金で一括納付します。相続発生後に納税資金が足りない場合、不動産を売却して資金を確保する必要が生じます。そのため、いざというときに売却しやすい「換金性の高い物件」を選ぶことが重要です。駅徒歩10分以内、人口の維持・増加が見込めるエリア、需要の安定した間取りなどがポイントになります。

タワーマンションとアパート経営を徹底比較

相続対策で人気の高い「区分タワーマンション投資」と「一棟アパート経営」。それぞれにメリット・デメリットがあります。下表で特徴を比較しましょう。

比較項目タワーマンション(区分)一棟アパート経営
初期投資額3,000万〜1億円超5,000万〜2億円超
節税効果高い(評価額の圧縮が大きい)中〜高(土地の貸家建付地評価)
換金性高い(売却しやすい)やや低い(買い手が限定的)
利回りの目安3〜5%程度6〜9%程度
管理の手間少ない(管理組合あり)多い(修繕・入居者対応)
主なリスク否認リスク・修繕積立金上昇空室・老朽化・修繕費

タワーマンションは節税効果と換金性に優れますが、2024年からマンションの相続税評価方法が見直され、市場価格との乖離が大きい物件は評価額が引き上げられるようになりました。極端な節税スキームは効果が薄れているため、注意が必要です。一方、一棟アパートは利回りが高く土地も資産として残せますが、管理の手間や空室リスクを許容できるかが判断のポイントです。

不動産投資の相続対策で失敗を防ぐための注意点を示す高層ビルのイメージ

相続対策で失敗しないための4つの注意点

不動産投資による相続対策は強力ですが、やり方を誤ると逆に損をしたり、税務署から否認されたりするリスクがあります。以下の4点を必ず押さえておきましょう。

① 行き過ぎた節税は税務署に否認される

2022年4月、最高裁判決で「相続直前に多額の借入で不動産を購入し、相続後すぐに売却した」という露骨な節税スキームが否認され、追徴課税が確定した事例があります。財産評価基本通達には「著しく不適当と認められる場合は国税庁長官の指示で評価できる」という総則6項があり、過度な節税は否認対象となります。次のような行為はリスクが高いため避けましょう。

  • 高齢かつ相続発生直前のタイミングでの駆け込み購入
  • 相続後すぐに売却する前提での購入
  • 収益目的がほとんど認められない過度な借入

② 納税資金不足に陥らないようにする

資産を不動産に換えすぎると、いざ相続が発生したときに納税用の現金が不足する恐れがあります。相続税は現金一括納付が原則のため、生命保険の活用や一定の現金の確保、換金性の高い物件選びでバランスを取ることが大切です。

③ 相続人同士で揉めない共有対策をする

不動産は現金のように簡単に分割できません。複数の相続人で共有名義にすると、売却や建て替えの際に全員の同意が必要となり、トラブルの原因になります。遺言書の作成、誰がどの不動産を相続するかの事前協議、必要に応じた家族信託の活用などで、争いを未然に防ぎましょう。

④ 空室・老朽化リスクを織り込む

節税効果は「賃貸されている」ことが前提です。長期空室になると貸家評価の前提が崩れ、収支も悪化します。築年数の経過による修繕費・大規模修繕の積立も計画に組み込み、長期にわたって安定経営できる物件・エリアを選ぶことが重要です。

不動産投資による相続対策の進め方【5ステップ】

実際に不動産投資で相続対策を始める際の流れを、5つのステップで整理します。

  1. 現状の資産棚卸し:現金・有価証券・不動産などを一覧化し、現状で相続税がいくらかかるかを把握する。
  2. 専門家へ相談:税理士・FP・不動産会社など複数の専門家に相談し、対策方針を固める。
  3. 物件選定と資金計画:評価額・収益性・換金性の3軸で物件を選び、借入を含む収支計画を立てる。
  4. 購入・賃貸開始:余裕を持ったスケジュールで購入し、入居者を確保して賃貸経営をスタートする。
  5. 定期的な見直し:税制改正や資産状況の変化に応じて、遺言書や物件構成を定期的に見直す。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続直前に不動産を購入しても節税効果はありますか?

相続発生の直前に駆け込みで購入する行為は、租税回避目的と判断されやすく非常にリスクが高い対策です。前述の総則6項により、購入価格と相続税評価額の差を利用した露骨な節税は否認され、追徴課税の対象となった判例も存在します。節税効果を確実に得るためには、十分な収益目的を持ち、長期的な賃貸経営を前提として、できるだけ早い段階から計画的に取り組むことが重要です。被相続人が高齢で健康上の不安がある場合は、税理士と相談のうえ慎重に判断しましょう。

Q2. 区分マンションとアパート一棟では、どちらが相続対策に向いていますか?

どちらにも一長一短があり、目的や資産規模によって最適解は異なります。区分マンションは比較的少額から始められ、複数戸を持てば相続人ごとに分けやすく、換金性も高いというメリットがあります。一方、アパート一棟は土地の評価減(貸家建付地)や建物の節税効果を大きく得やすく、利回りも高い傾向にあります。ただし一棟は分割しにくく、空室リスクや修繕費の負担も大きくなります。納税資金や遺産分割のしやすさも考慮し、複数の物件タイプを組み合わせるのも有効な手段です。

Q3. 借入(ローン)を利用すると相続税はさらに下がりますか?

借入金は相続発生時に「債務」として相続財産から控除されるため、見かけ上の相続財産を圧縮する効果があります。ただし、ローンの残債と物件の評価額が相殺される構造であり、借入そのものが直接節税になるわけではありません。過度な借入は収支を悪化させ、空室や金利上昇のリスクを高めます。あくまで収益性を確保できる範囲で活用し、納税資金とのバランスを保つことが大切です。

Q4. 相続後すぐに不動産を売却しても問題ありませんか?

相続後すぐの売却自体は違法ではありませんが、「相続税評価額で申告した直後に時価で売却する」という行為は、当初から節税目的だったと判断されやすく、評価が否認されるリスクがあります。また、相続開始から3年10か月以内に売却すれば「取得費加算の特例」により譲渡所得税を軽減できる制度もあるため、売却のタイミングは税理士と相談しながら慎重に決めましょう。

Q5. 不動産投資の相続対策は誰に相談すればよいですか?

相続対策は税務・法務・資産運用が複雑に絡むため、一人の専門家だけでは最適な判断が難しいケースが多くあります。相続税のシミュレーションや申告は税理士、遺言書や家族信託の設計は司法書士・弁護士、家計全体のライフプランや資金計画はFP(ファイナンシャルプランナー)、物件選定は不動産会社といったように、それぞれの専門家を組み合わせて相談するのが理想です。窓口を一本化したい場合は、相続に強い不動産会社やワンストップで対応できる事務所を選ぶとスムーズに進みます。

まとめ

不動産投資は、現金や有価証券に比べて相続税評価額を大きく圧縮できるため、有効な相続対策の一つとなります。土地は路線価で約8割、建物は固定資産税評価額で約7割の評価となり、賃貸に出すことでさらに「貸家建付地」「貸家」としての評価減が受けられます。加えて、小規模宅地等の特例を活用すれば、評価額を最大50%まで減額できる可能性もあります。

一方で、節税効果ばかりに目を奪われると、納税資金の不足・相続人同士の争い・空室や老朽化による収支悪化といったリスクを見落としかねません。本記事で解説したとおり、過度な節税スキームは総則6項により否認されるリスクもあるため、あくまで「収益性のある健全な賃貸経営」を前提に、長期的な視点で取り組むことが成功の鍵となります。

相続対策で大切なのは、以下のポイントを押さえることです。

  • 過度な節税に頼らず、収益目的のある健全な投資を行う
  • 生命保険や現金を確保し、納税資金不足を防ぐ
  • 遺言書や家族信託を活用し、共有によるトラブルを回避する
  • 空室・老朽化リスクを織り込んだ物件・エリアを選ぶ
  • 税理士・FP・不動産会社など複数の専門家に相談する

相続対策は、早く始めるほど選択肢が広がり、効果も高まります。まずは現状の資産を棚卸しし、相続税がいくらかかるのかを把握することから始めましょう。そのうえで、信頼できる専門家とともに自分や家族に合った対策を計画的に進めていくことが、円満な資産承継への確かな一歩となります。本記事が、あなたの相続対策を考えるきっかけとなれば幸いです。

クラウド管理編集部
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