不動産投資で法人化すべき人とは?メ リット・デメリットと最適なタイミングを解説

不動産投資で 法人化を検討している人の多くは、「本当に節税できるのか」「設立費用や維持費はどれくらいか」「個人所有と比べてどちらが有利か」と疑問を持っています。税率が高い人ほど法人化の効果は大きく、相続対策や融資の面でも有利になる可能性があります。

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本記事では、法人化に向いている人の特徴、メリット・デメリット、そして最適なタイミングを具体的な事例を交えて解説します。読み進めることで、自分にとって法人化が有効かどうかが明確になり、次の行動に踏み出せるようになります。

不動産投資を法人化すべき人の特徴とメリット・デメリット

不動産投資を進めていくと、個人で保有するよりも法人として運営した方が有利になるケースもあります。特に課税所得が一定以上に達した投資家や、複数の物件を保有し事業規模を拡大している人にとって、法人化節税効果融資拡大資産承継の観点から大きな意味を持ちます。

なぜ不動産投資の法人化が有利なのか?


1. 税負担の軽減

個人で不動産所得を得る場合、所得税と住民税を合わせた税率は、所得額に応じて最大で55%に達する可能性があります。一方で、法人として不動産を所有する場合、法人税等実効税率は概ね30%台とされ、所得水準次第では差が生じる可能性があります(個別試算が必要)。所得額が大きくなるほど、個人と法人の税負担の差は大きくなり、年間数百万円の差に及ぶこともあります。

課税所得 個人の所得税・住民税(合計)
4,000万円超 最大55%

出典:国税庁「所得税の速算表」

2. 融資の拡大

法人格により財務の区分・開示が明確になることで、審査上ポジティブに評価される場合があります。これは、法人が事業の継続性や財務の透明性という観点で、個人よりも高く評価される傾向があるためです。

3. スムーズな資産承継

将来の相続を見据えれば、不動産をそのまま分割するよりも、法人株式として承継する方が柔軟で、相続税の対策にもなります。法人の株式であれば、持ち分を細かく分割して相続することが可能です。また、相続税評価額の引き下げにつながる対策も取りやすくなります。

法人化に向いている人の特徴

課税所得が900万円を超えると、個人の所得税・住民税の負担は増加し、最大で55%に達する可能性があります。一方、法人税等実効税率約30%台に抑えることが可能です。このため、年収1,000万円を超えるサラリーマン投資家や、一定の所得規模(例:年収1,000万円超や不動産所得が数百万円規模)では、法人化の損益分岐を検討する事例が多いという特徴があります。

出典:国税庁「所得税の速算表」

出典:「法人税の税率」

法人化のメリット(節税・融資・相続対策)


法人化の最大のメリットは節税効果です。法人の実効税率約30%台に抑えられ、個人の最高税率55%との差が大きな節税余地を生みます。さらに、赤字を最長10年間繰り越せる制度(法人税法)により、将来の黒字と相殺が可能です。

銀行からの融資枠も拡大しやすく、資金調達力が増します。承継設計によっては相続税評価や分割の選択肢が広がる場合があります。

出典:国税庁「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」

法人化のデメリット


一方でデメリットも無視できません。会社設立には登録免許税や定款認証料を含めて約25〜30万円かかります。さらに、赤字でも法人住民税の均等割が毎年7万円以上必要です。社会保険加入義務により固定費が増加する場合もあります。

法人では長期譲渡所得の優遇税率が使えないため、売却益が大きい場合には個人より不利になる可能性もあります。

出典:法務省「会社設立手続について」

出典:国税庁「長期譲渡所得の課税の特例」

不動産投資を法人化するベストタイミングを示すイメージ画像

不動産投資で法人化するベストタイミング

不動産投資を法人化する最適なタイミングは、それぞれの所得水準や投資目的によって異なります。課税所得が増えると個人の最高税率は55%ですが、法人の実効税率約30%台に抑えられるため、一定の所得や物件規模を超えた段階で法人化を検討すると、節税効果が大きくなります。

また、資産承継を見据える時期には、不動産そのものではなく法人株式を相続できるため、分割が容易で相続税対策としても有効です。長期的に5棟以上の物件保有や総額数億円規模の拡大を目指す投資家にとっては、金融機関からの信用力を高め、融資枠拡大につなげる意味でも法人化の価値は大きくなります。

つまり、法人化のタイミングは「税負担が重いと感じ始めた時」「資産承継を意識し始めた時」「事業を本格的に拡大したい時」の3つが重要な判断基準になります。

課税所得や物件数が一定以上になった時


課税所得が900万円を超えると、個人の税率は急激に増加し、最大で55%です。一方で法人の実効税率約30%台に抑えられます。運営規模が拡大するほど、法人・個人の税負担差が顕在化しやすい傾向があります。

出典:国税庁「所得税の速算表」

出典:国税庁「法人税の税率」

家族への資産承継を考え始めた時


相続や贈与を見据える段階も法人化の好機です。法人にしておけば不動産そのものではなく株式を承継できるため、分割が容易になり相続税負担も軽減できます。承継の工夫をしておかないと税負担が重くなる可能性が高い層ほど、法人化で対策を講じる意義が大きいといえます。

長期的に事業規模を拡大したい時


将来的に5棟以上の保有や総額3億円を超える不動産ポートフォリオを目指すなら、法人化は有力な選択肢です。法人格を持つことで金融機関からの信用力が増し、金利条件が有利になる可能性があります(取引実績・属性・担保条件等による)。

まとめ:不動産投資の法人化は誰にとって得なのか?

不動産投資の法人化は、課税所得が900万円を超える高所得層や複数棟を保有して年間1,500万円以上の家賃収入を得ている人にとって、大きな節税効果をもたらします。法人の実効税率約30%台と個人の最高税率55%との差は、長期的に数百万円単位の手残りを左右し、資産形成スピードに直結するといえるでしょう。

一方で、設立費用25〜30万円毎年7万円以上法人住民税均等割といった固定コスト、長期譲渡所得の優遇が使えない不利なども存在します。小規模投資家にはかえって負担が大きくなる場合もあり、全員に適しているわけではありません。だからこそ「自分の所得規模」「保有物件数」「将来の承継方針」に照らし合わせた判断が欠かせません。

次に取るべき行動は、自分の課税所得や保有資産を具体的に試算し、法人化した場合と個人所有を続けた場合の税負担や承継方法を比較することです。その上で専門家に相談すれば、自分に合った最適解が見えてきます。不動産投資を通じて「税金対策・承継・資金調達」の3つを味方につけることで、将来の安心と経済的自由を手に入れる第一歩を踏み出せます。今こそ、自分に最も有利な投資の形を検討してみましょう。

よくある質問(FAQ)

法人化すると本当に節税になりますか?
課税所得が900万円を超えると、個人の最高税率は55%に達します。一方で法人の実効税率約30%台に抑えられるため、一定以上の所得規模では大きな節税効果が期待できます。
法人設立や維持にどれくらい費用がかかりますか?
設立時には登録免許税や定款認証料などで25〜30万円ほど必要です。さらに、毎年7万円以上法人住民税均等割や税理士報酬など、維持費用がかかります。
サラリーマンでも法人を作れますか?
会社員でも法人を設立することは可能です。ただし勤務先の就業規則で副業が禁止されている場合は制約があり、事前に確認が必要です。

著者

クラウド管理編集部

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