マンションの適切な管理が滞ると、建物の劣化だけでなく、修繕コストの増加や資産価値の下落など、マンションオーナーに直接的な影響が及びます。
近年は老朽化と居住者の高齢化が重なり、管理組合の運営力が低下しやすい状況も相まって、国土交通省や自治体が警鐘を鳴らすほど「管理不全マンション」が増加しています。
この記事では、管理不全の定義、前兆となるサイン、行政制度の動き、そして区分所有者ができる対策まで、マンション管理の視点から解説します。
この記事の3行まとめ
- 管理不全は「老朽化 × 高齢化」が重なることで起こりやすく、全国的に課題が深まっている
- 兆候を早期に把握し、修繕計画・管理組合運営・滞納状況を定点観測することが予防の鍵
- 管理会社の見直しや外部専門家の活用を組み合わせることで、資産価値の低下を防ぎやすくなる
管理不全の兆候をいち早く察知して、資産価値の下落を防ぎましょう。
管理不全マンションとは?国交省が警鐘を鳴らす深刻な問題

管理不全マンションには法律上の明確な定義はありませんが、国土交通省や自治体資料では、次のような状態が 「管理上問題がある」 とされています。
- 修繕が計画どおり実施されていない
- 長期修繕計画が未策定または古いまま更新されていない
- 管理組合の運営が停滞
- 管理費・修繕積立金が不足または滞納が多い
- 外壁・鉄部などの劣化が放置されている
こうした状態は、建物の老朽化に居住者の高齢化が重なり、理事会運営や修繕判断が難しくなることで生じやすいと報告されています。
管理不全マンションに共通する5つの兆候

管理不全は突然発生するものではなく、静かに進行するのが特徴です。
これから紹介するのは、特に早期に気づきやすい5つの兆候で、1つでも当てはまる場合は注意が必要です。
①管理費・修繕積立金の滞納が増えている
滞納率が上昇すると、修繕費の不足が生じ、大規模修繕の延期や簡易工事への切り替えが起きやすくなります。
滞納者への督促フローが明確でない場合も、管理不全を招く大きな要因です。
②長期修繕計画が10年以上更新されていない
計画の見直しが行われていないマンションは、実際の劣化状況とのズレが大きくなり、将来的な資金不足を招きます。
計画の更新履歴を確認することで、管理組合の運営体制の良し悪しが分かります。
③外壁や鉄部の劣化が目立つ
ひび割れ、シーリング劣化、鉄部のサビなど、建物の外観から読み取れる劣化は管理体制の健全性を反映しています。
小さな劣化が長期間放置されている場合は、管理組合が機能していない可能性が高いといえます。
④ 理事会が機能していない
「役員のなり手不足により同じ人が何年も役職を続けている」、「議事録の内容が毎年ほぼ変わらない」、「管理会社からの提案が検討中のまま進まない」といった状態は意思決定の停滞を示しています。
居住者の高齢化で理事会が機能しづらくなり、決議が進まなくなるケースが増えています。
⑤ 総会の出席率が極端に低い
総会での意思決定ができないマンションでは、修繕工事の承認が進まず、建物の老朽化に拍車がかかります。
投票率の低さは、住民の関心の低下だけでなく、管理会社からの情報発信不足の可能性もあります。
管理不全が招く資産価値の急落と生活リスク

管理不全が進行すると、生活面と資産価値の両面に深刻な影響が及びます。
建物の劣化が進むことで外壁剝落や漏水などの事故につながり、給水ポンプ・排水設備の故障が生活を直撃することも珍しくありません。
また、管理不全マンションは市場でリスク物件と判断されやすく、査定価格が大きく下がる傾向があります。
購入検討者から敬遠されやすく、売却までの期間が長期化するケースも多いのが実情です。
自治体の対策・国の制度改正

管理不全問題が深刻化する中、各自治体や国交省は次のような制度を進めています。
管理計画認定制度
管理組合の管理体制・修繕計画が基準を満たす場合、自治体が「認定マンション」として評価する制度です。
- 運営体制の適切さ
- 長期修繕計画の妥当性
- 修繕積立金の水準
- 管理規約の整備
認定により、金融機関の優遇や自治体の支援を受けられる場合があります。
管理状況届出制度
マンションの管理状況を自治体へ届け出ることで、管理不全の予兆を早期に捉える仕組みです。
マンションに管理不全の兆候が見られる場合、マンション管理アドバイザーの派遣・改善支援を受けられます。
管理不全を防ぐためにオーナーができる具体的な対策

管理不全は管理組合だけの問題ではなく、区分所有者一人ひとりが状況を把握することで早期に予防できます。
まず重要なのは、決算書・議事録・長期修繕計画の年1回の確認です。
資料を見ると、収支の健全性、議論の進捗、修繕計画の現実性が把握できます。
特に、修繕積立金が国交省ガイドラインと比較して極端に低い場合は注意が必要です。
管理会社との契約見直しも効果的です。
委託費はマンションの維持費の大きな部分を占めるため、複数社から見積りを取り比較することで、適正価格かどうか判断できます。
管理会社の見直しは、3〜5年ごとに行うのが理想といわれています。
また、督促フローを整備して滞納を放置しない体制をつくることも重要です。
滞納者が増えると修繕計画全体が破綻するため、管理組合と管理会社が連携し、早期対応できる環境を整えましょう。
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第三者管理方式・外部専門家を活用するメリット・デメリット

第三者管理方式とは、管理組合役員の一部または全てを外部専門家が担う管理方式です。
導入することで、専門家の判断に基づいて理事会が効率的に運営され、管理会社との契約内容や見積りの精査も行ってくれます。
一方で、外部専門家を雇うための費用負担が増えることや、住民同士の議論が減少し意思決定が外部に寄る懸念もあります。
特に、老朽化が進んだマンションや、高齢化等により役員の担い手が減少しているマンションでは、選択肢の一つとして検討するといいでしょう。
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管理不全を早期に察知する「定点観測リスト」

管理状態の悪化を放置しないためには、毎月・半年・毎年といった定期的なチェックが効果的です。
以下は、管理組合や区分所有者が実践しやすい「定点観測表」です。
| チェック頻度 | 観察ポイント | 管理上の意味 |
|---|---|---|
| 月次 | 掲示物の更新状況 | 更新が止まっている場合、管理会社の巡回や報告が不十分な可能性がある |
| 清掃の質・ゴミ置き場の状態 | 汚れの放置は管理会社の品質低下や契約内容の不一致のサイン | |
| 半年 | 理事会議事録 | 議論が停滞していると、意思決定の遅れが建物劣化につながる |
| 管理費・修繕積立金の収支 | 滞納や不足は早期に対処しないと管理不全に直結する | |
| 年次 | 長期修繕計画と実施状況 | 計画と現状の差が大きい場合、資金不足または管理不全の前兆 |
このように「小さな変化」を見逃さずに観察することが、管理不全の早期発見につながります。
まとめ|管理不全は気づいた時には手遅れになる前に対策を

管理不全マンションは、放置してしまうと修繕不能・売却困難・事故リスク上昇など深刻な事態を招きます。
しかし、早期に兆候を把握し、管理組合が適切に機能すれば改善は十分可能です。
長期修繕計画と財務内容の定期点検、理事会運営の見直し、管理会社の適正評価、そして必要に応じた外部専門家の活用によって、マンションの安全性と資産価値を守ることができます。