不動産投資を検討する際、「アパート経営とマンション経営はどう違うのか」「自分にはどちらが向いているのか」と悩む方は多いでしょう。どちらも家賃収入を得る点は同じでも、建物構造・投資額・収益性・リスク・管理方法には大きな差があります。
本記事では、両者の定義から投資額・収益性・リスク・出口戦略までを比較し、最後に「どんな人にどちらが向いているのか」を整理します。
目次
アパート経営とマンション経営の違いとは?

アパート経営とマンション経営の違いを知るために、まずは両者の基本的な定義を整理しましょう。
アパート経営とは
アパートは、木造または軽量鉄骨造で建てられた2〜3階建ての低層集合住宅を指すことが一般的です。
多くは一棟まるごと所有し、複数戸を賃貸します。初期費用は抑えやすく、所有地の活用にも向いています。一方で木造は法定耐用年数22年(軽量鉄骨造は34年)と短く、修繕・建て替えサイクルが早めになる傾向があります。
マンション経営とは
マンションは、RC(鉄筋コンクリート)造やSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造の中高層住宅が中心です。
経営形態は、1室単位で所有する「区分」と、建物全体を保有する「一棟」の2種類があります。初期投資は大きい反面、耐久性や資産価値が高く、都市部では安定収益を狙いやすいと言えます。
投資額・資金調達の違い

アパート経営とマンション経営では、必要となる資金の規模や融資条件が大きく異なります。
アパート経営の資金面
アパートは木造中心のため、建築費・取得費を抑えやすく、自己資金が少なくても着手しやすいのがメリットです。所有している土地を活用して新築アパートを建てるケースも少なくありません。
融資は通りやすい一方で、返済期間が短く設定されるケースがある点には注意が必要です。
マンション経営の資金面
構造が堅牢な分、建築費は高額になりやすい傾向にあります。数千万円〜億単位になることも珍しくありません。その代わり長期ローンを組みやすく、余裕を持った返済計画を立てやすいという利点があります。
ただし審査は厳格で、金利上昇リスクや借入規模への耐性が問われます。
収益性・利回りの違い

次に、収益性と利回りの観点から両者を比較していきましょう。
アパート経営の収益性
アパートは、マンションと比較すると賃料相場は低めですが、取得費を抑えられるため利回りは高めに出やすい傾向にあります。木造は減価償却期間が短く、節税効果を得やすい点も特徴です。
ただし、入居者層が低価格帯に寄りやすいため、賃料下落には警戒しなくてはいけません。
マンション経営の収益性
マンションは賃料単価が高く、都市部では安定したキャッシュフローを築けます。一方で、利回りはアパートより控えめになりがちです。
RCの法定耐用年数が長く、適切な修繕により建物価値を保ちやすいのが強みといえるでしょう。
維持管理・耐用年数・コストの違い

アパートとマンションでは、建物の構造や管理方法によって、維持コストや耐用年数も変わります。
アパートの維持管理
木造や軽量鉄骨造のアパートは、修繕やリフォームの頻度が高くなりやすく、築年数の進行とともに資産価値の下落も早まる傾向があります。
法定耐用年数は木造が22年、軽量鉄骨造は骨材の厚みによって19年・27年・34年と区分され、いずれも比較的短めです。耐震性や防音性についても、マンションに比べると劣る場合があります。
マンションの維持管理
マンションは管理組合や管理会社によって共用部分が維持されるため、管理体制が整いやすい反面、修繕積立金や管理費の負担がかかります。
RC造の法定耐用年数は47年と長く、適切な修繕を行えばさらに長持ちします。防音性や耐震性も高く、長期保有に向いています。
リスク比較|空室・災害・運営の違い

不動産投資にはリスクがつきものですが、その内容はアパートとマンションで異なります。
アパート経営のリスク
アパートは郊外・地方立地が多く、人口動態の影響で空室リスクが高まりやすい点に注意が必要です。
また、木造は火災・地震被害リスクや劣化スピードの影響を受けやすく、価値下落も相対的に早い傾向にあります。
マンション経営のリスク
マンションは都市部に多く空室は抑えやすい半面、競合が多く賃料設定を誤ると埋まりにくいことがあります。
加えて、大規模修繕コスト負担、ワンルーム条例などの規制リスクも確認が必要です。
入居ターゲットと立地条件の違い

入居者層や立地戦略の違いも、経営の方向性を決める重要なポイントです。
アパート経営の入居者層
アパートは学生や若年層、低家賃を重視する単身者に人気があります。郊外や地方でも需要がある一方、都市部ではマンションに比べて選ばれにくい傾向があります。広めの間取りでファミリー需要を捉える戦略がおすすめです。
マンション経営の入居者層
マンションは都市部の単身者やDINKS(共働き夫婦)、高めの家賃を支払える層に需要があります。立地は駅近や都心部が有利で、利便性を重視する入居者に支持されやすいです。
出口戦略・資産価値の違い

投資終了時の売却や資産処分も視野に入れておく必要があります。
アパート経営の出口戦略
アパートは基本的に一棟売却が中心で、買い手は投資家に限られるため流動性が低い傾向にあります。築年数が経過すると価値が大きく下落し、売却しにくくなるケースもあります。
マンション経営の出口戦略
区分マンションは中古市場で流通しやすく、築古でも立地が良ければ売却先を見つけやすいです。一棟マンションも売却可能ですが、規模が大きいため買い手は限られます。都市部立地であれば資産価値を維持しやすい点が強みです。
どちらを選ぶべき?向いている人の特徴

結局のところ、アパート経営とマンション経営のどちらが適しているかは、投資家自身の資金力や目的によって変わります。以下の表におすすめな人の特徴をまとめているので、参考にしてみてください。
項目 | アパート経営が向く人 | マンション経営が向く人 |
---|---|---|
投資資金 | 初期資金を抑えて始めたい人 | 都市部の高額物件に投資できる資金力のある人 |
土地活用 | 所有地を有効活用したい人 | 特に該当なし |
節税効果 | 減価償却期間が短く、節税効果を早期に得たい人 | 長期保有による安定した資産形成を重視する人 |
投資目的 | 不動産投資の入門/小規模から始めたい | 相続や老後の安定収入を意識した長期運用 |
注意点 | 耐用年数が短いため、修繕計画や出口戦略を早めに検討する必要あり | 初期投資や審査が厳しく、金利上昇リスクやキャッシュフロー管理への耐性が求められる |
まとめ

アパートもマンションも家賃収入を得る手段ですが、構造・資金計画・収益性・リスク・出口は大きく異なります。
「少額で着手しやすさ」を優先するならアパート、「価値維持と長期運用」を重視するならマンションが有力候補。自分の資金力と目的に照らし、事前シミュレーションとリスク把握を徹底することが、安定経営への近道です。