賃貸経営において死活問題となるのが、空室の発生です。いくら マンション・アパートを所有していても入居者がいないと家賃が発生しないため、収益になりません。
人口減少や住宅の供給過多が指摘される現代において、所有物件の競争力をいかに高め、入居者に選ばれ続けるかは、すべてのオーナーにとっての課題といえるでしょう。
重要なのは、空室の原因を正しく突き止め、時代や入居者のニーズに合った適切な対策を講じることです。
本記事では、空室が発生する原因、具体的な空室対策として効果的な「設備投資」に焦点を当てて解説します。この記事を通じて、賃貸経営を成功に導くためのヒントを見つけてくれたら幸いです。
なぜ空室が発生するのか?原因を把握しよう

総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、 日本全国の住宅における空き家率は13.8%に達し、その数は900万戸と過去最多、賃貸向けは約5.9%が空き家です。
空室の発生・入居率には大きな幅があるという現状を正しく理解し、ニーズに即した設備投資を戦略的に検討しなくてはいけません。
なぜ、決してニーズが少なくない賃貸住宅に空室が発生するのか、その原因を説明します。
入居者ニーズとのズレが空室の原因に
空室が生まれる原因の一つが、近年のニーズを読み取らずに昔の設備のままで放置している場合です。物件のリニューアルをしないままでいると、入居希望者が求めているものとのズレが生じ、空室が生まれてしまいます。
空室発生の主な要因- 学生に寄り添った家賃設定をしていない
- ファミリー向けの間取り・設備が用意されていない
賃貸物件のあるエリアにどんな層が多いのか把握して、それに合わせた対応をしないと、上記のようなズレが生まれて、空室が発生してしまうのです。
築年数だけじゃない!管理状態の影響
空室が生まれる原因は築年数の長さもありますが、原因はそれだけではありません。建物や共有スペースの管理状態も、入居希望者の判断材料になります。
共用部や専有部の清掃が行き届いていないと内見者に悪印象を与え、それによって起きるのが入居率低下です。
設備や居住環境の陳腐化にも注意
リフォーム・リノベーションを実践せずに、建築してからそのままの状態を維持していると、空室が発生します。
駅から近い、周囲にさまざまなお店があり便利という好条件が揃っていても、 設備・居住環境が時代遅れ・陳腐であると、入居希望者は他の住み心地の良い物件を選ぶでしょう。
他の賃貸物件との差別化を達成し、空室の発生率を下げるためには、思い切ったリフォーム・リノベーション費用を投資して、改善しないといけません。
空室対策に有効なおすすめ設備とは?

賃貸住宅を経営していて空室が目立つ物件は、以下の点を疎かにしている可能性があります。
セキュリティ強化の重要性- 入居者を守るためのセキュリティ強化
- 生活の利便性を高める設備
- ファミリー・高齢者を対象とした設備
これらが不足していると入居者は不安になり、他の物件を選ぶでしょう。では以下より、空室を作らないためには具体的にどんな設備を用意すればいいのか説明します。
防犯・セキュリティ設備で安心感を提供
女性の1人暮らしで不安になっているのが、住まいのセキュリティ環境です。1人で暮らしていれば誰にも頼れないので、 セキュリティ環境が貧弱だと安心して住めないという人もいるでしょう。
また、1人暮らしに限らず小さいお子さんのいるファミリーも、ハイレベルなセキュリティを求めている家庭も少なくありません。
賃貸住宅のセキュリティ設備・体制が万全であれば、毎日を安心して暮らせます。 エントランスのオートロック、共有部の防犯カメラ、センサーライトなどを導入すると安心感が増し、入居率向上につながるでしょう。
🔒 セキュリティ設備の効果実例- オートロック導入後:女性入居者の申込み率が約30%向上
- 防犯カメラ設置後:治安面での安心感により入居期間が平均1.5年延長
- センサーライト設置:夜間の安全性向上で空室期間が平均2ヶ月短縮
生活利便性を高めるIoT・スマート設備
入居率の低い物件のパターンであるのが、以下の設備が用意されていない場合です。
生活利便性向上設備- 無料インターネット
- 宅配ボックス
- 高速Wi‑Fi
- 浴室乾燥
上記の設備は、日々の生活を円滑にするために必須という人もいます。しかしこれらの設備がないと生活に不安やストレスが生じて、入居してもすぐに退去する可能性があるでしょう。
入居者の生活を便利にする設備をしっかりと用意していれば、他の物件との差別化も達成できます。上記の設備にオートロックを加えた環境を用意すれば、特に若年層のニーズを満たせるはずです。
高齢者やファミリー層に配慮した設備
高齢者やファミリー層の入居者を希望する場合、その層に合わせた以下のような設備・環境を用意しないといけません。
高齢者・ファミリー向け設備- バリアフリー対応
- 手すり
- 見守りシステム
- 追いだき機能
- 宅配ボックス
バリアフリー対応の建物は増えていますが、すべての建物が高齢者・小さいお子さんに対応しているとはいえません。高齢者・小さいお子さんが暮らしやすい環境を用意すれば、高齢者・ファミリーは喜んで入居してくれるでしょう。
車椅子やベビーカーが移動しやすい、安心・安全と利便性を両立させる設計が重要です。
費用対効果を意識した設備投資のポイント

空室発生を回避するための設備投資をする場合、ただお金をかけるだけではいけません。いくら立派な設備を導入しても、設備に投入した初期費用を回収できなかったら、赤字になり損をするだけです。
設備投資をする際は、事前に費用対効果を考えて回収できる計算をしなくてはいけません。次より、設備投資の費用を回収するための、大事なポイントについて説明します。
導入コストと回収期間の目安
大規模なリノベーションは資金が必要ですが、例えば宅配ボックスやWi-Fiなど 小規模設備投資は比較的安価で導入でき、費用対効果も高いです。 また、省エネ設備などは補助制度の活用により初期費用を抑えられます。
賃料UP・入居期間延長への影響
有効な設備投資によって入居率が高まり長期入居へつながれば、空室による家賃損失リスクは大きく低減します。 入居率95%以上を維持できている高稼働物件は、良好な設備・管理が共通点です。
補助金・助成金の活用方法
国や自治体は、断熱改修・高効率給湯器・太陽光発電などの省エネ改修に対する補助金・助成金制度を用意しています。その種類は以下の通りです。
補助金・助成金の種類 | 対象・金額 |
---|---|
住宅セーフティネット制度 |
・空き家を、高齢者・障害者などに提供する際、リノベーションにかかる費用を補助 ・上限100万円 / 戸 |
省エネ改修補助金 |
・省エネリフォームを補助 ・50~200万円 |
自治体の空き家リフォーム助成金 |
・空き家のリフォームを助成 ・50~200万円 |
それぞれ申請期間・条件が異なるため、事前に確認することが大事です。
金融機関の融資で設備更新を進めるコツ
補助金の併用と長期修繕計画を立てることで、金融機関からの融資による資金調達は進めやすくなります。長期的な修繕計画を策定しているオーナーはまだ少数派といわれていますが、計画的に修繕を行っていること自体が金融機関にとって信頼性を高める要素となり、融資実行の判断材料としてプラスに働きます。そのため、計画的な経営姿勢を示すことは資金調達を円滑に進める大きな強みになるでしょう。
まとめ|空室対策には時代に合った設備投資を
賃貸経営における空室問題は、単一の原因で発生するわけではなく、入居者ニーズの変化、管理状態、設備の陳腐化など、さまざまな要因が絡み合って生じます。
この問題を解決して安定した収益を確保するためには、まず自らの物件が抱えている課題を正確に分析し、現代の入居者のライフスタイルや価値観に応えることが不可欠です。
そして、導入コストと賃料アップや長期入居による収益改善を見比べ、費用対効果を冷静に見極めることもしなくてはいけません。
補助金や融資制度といった公的支援も積極的に活用し、計画的に投資を行うことで、リスクを抑えながら物件の価値を最大化することが可能です。
賃貸市場は常に変化しています。オーナーとして、その変化に柔軟に対応し、入居者に選ばれ続ける物件を提供し続ける努力が、これからの賃貸経営を成功に導く鍵となるでしょう。