最新の融資トレンドは? | 不動産投資オーナーが知っておくべき資金計画のコツ

不動産投資の成功を決める際は「どの物件を選ぶか」が重要とされます。しかし、それと同じくらい「資金計画」も重要です。どれだけ収益性の高い物件でも、融資条件や金利動向を見誤るとキャッシュフローが悪化し、安定した運用が難しくなります。

さらに、金融機関の融資姿勢は時代によって変化し、とくに近年は金利上昇や金融機関のリスク管理強化により、従来とは異なる基準での審査が進んでいます。


この記事では、不動産投資オーナーが知っておくべき「最新の融資トレンド」をはじめ、それを踏まえた資金計画の立て方を詳しく解説します。

不動産投資を取り巻く最新の融資環境

まずは、金利や金融政策、審査のポイントなど、昨今の不動産投資における融資の環境について解説します。

金利動向と金融政策の影響

近年、日本銀行の金融政策が大きな転換点を迎えています。長らく続いた低金利政策が徐々に修正されつつあり、変動金利型ローンを利用している投資家にとっては、返済額増加のリスクが現実味を帯びてきました。


特に、変動金利は短期的には低コストで魅力的ですが、金利上昇局面では一気に負担が膨らみます。逆に、固定金利は当初の返済額は高めでも、長期的に安定したキャッシュフローを確保できるため、再評価されつつあります。

金融機関の融資姿勢の変化

かつては銀行の不動産に対する融資基準が低く、「収益物件=融資を受けやすい」といったイメージをもたれていました。しかし今では、金融機関がより慎重に審査を行っているのが現状です。

メガバンクは不動産投資ローンへの積極姿勢を弱めており、地域金融機関や信用金庫が地元密着型で投資家を支援するケースが増えています。


一方で「融資がスピーディーである」と注目されているのがネット銀行です。ただしオンラインで融資を受けられるがゆえに、物件の収益性や担保評価が厳しくなる傾向にあります。

 融資審査で重視されるポイント

現在の融資審査でとくに注目されるのが「LTV(Loan to Value:融資比率)」と「DSCR(Debt Service Coverage Ratio:返済余力比率)」です。LTVとは、物件価値に対してどの程度借りているのかを示します。DSCRとは、収益からどれだけ返済が可能なのかという指標です。これらは金融機関がリスク判断をするうえで重要な指標といえます。


さらに、投資家の資産背景だけでなく、物件の運営体制や修繕計画なども評価対象になり、単なる「属性」よりも「投資事業としての持続可能性」が問われています。

オーナーが押さえるべき資金計画の基本

昨今の融資事情をお伝えしましたが、不動産オーナーは何を基準に、どのように資金計画を立てるべきなのでしょうか。資金計画の基本について詳しくお伝えします。

資金計画の3本柱

不動産投資の資金計画は大きく「自己資金」「運転資金」「返済計画」の3つで構成されます。それぞれの意味は次のとおりです。

・自己資金:一般的に物件価格の1〜3割程度を用意することで、金融機関からの評価が高まりやすくなる
・運転資金:空室や滞納、修繕費に備えるための流動資金を手元に確保しておくことが必須
・返済計画:繰上返済の可能性も含め、長期的なキャッシュフローを見据えて組み立てることが重要

自己資金は大切なキャッシュなので、多くもっておいた方が得です。事業を立ち上げる(主に物件取得費)のに必要なほか、運転資金にも利用できます。不動産投資においては、毎月安定したキャッシュフローを維持することが大切です。そのためにも、自己資金と融資をうまく組み合わせて、初期費用と運転資金に回す必要があります。

シナリオ別の計画づくり

不動産は政策や景気に大きく左右されるため、安定経営のためには「シナリオ」が必須です。たとえば、次のようなパターンでシナリオを作ることをおすすめします。

・金利上昇シナリオ:変動金利利用者は、金利が1〜2%上がった場合の返済額増加を試算しておくべき
・空室率悪化シナリオ:地域の需給バランスが崩れた場合、一定期間の空室を想定したキャッシュフロー計算が必要
・修繕費高騰シナリオ:資材価格の上昇や工事費高騰に備え、修繕積立金を余裕をもって設定することが望まれる

収支シミュレーションの実践

資金計画を立てる際には、Excelや専門ソフトを使った収支シミュレーションが効果的です。


例えば、年間家賃収入が1,200万円、年間返済が800万円、管理費や修繕費が200万円と仮定すると、手元に残るのは200万円。この200万円が突発的な空室や修繕に耐えられる水準かどうかを常にチェックしなければなりません。

最新トレンドを踏まえた融資戦略

前章でお伝えしたトレンドを踏まえたうえで、オーナーが立てるべき融資戦略を紹介します。

・長期固定金利ローンを利用する
・法人化で融資枠の拡大を狙う
・サステナブル投資を検討する
・金融機関に「透明性」を示す

1)長期固定金利ローンを利用する

近年は金利が上昇傾向にあるため、「長期固定金利ローン」が注目を浴びています。借り入れた時点の金利が完済まで変わらない、いわば毎月の支払額が一定のローンです。代表例として「フラット35」があげられます。

長期固定金利ローンを利用する際は、大手銀行だけでなく地域密着型で融資を行う「地銀」がおすすめです。彼らが提供する独自の固定金利商品を利用することで、将来の返済負担を抑えられます。

2)法人化で融資枠の拡大を狙う

個人では借入可能額に制限がありますが、法人化することで融資枠を広げられるケースがあります。法人化は、規模拡大を目指すオーナーにとって、節税と融資の両面でのメリットが大きいです。ただし、法人化には設立費用がかかることや、経理が複雑化するといったデメリットもあります。

3)サステナブル投資を検討する

最近では「ESG投資」の観点から、省エネ対応や環境性能の高い物件に対して優遇融資を提供する金融機関も登場しています。たとえば、太陽光パネルの設置や断熱性能の高い建材を導入することで、融資条件が改善されるケースもあります。

3)金融機関に「透明性」を示す

融資を受けやすくするには、金融機関とのコミュニケーションや関係性の構築が重要です。たとえば、定期的に収支状況を報告する、修繕計画を提示するなど「透明性」を示すことで信頼を獲得できます。物件の収支シミュレーションや市場調査を整えたうえで交渉に臨めば、金利や融資比率の条件を有利に引き出せる可能性もあります。

【まとめ】融資や金利トレンドを読んで安定的な不動産投資をしよう

毎年のように融資環境は変化しており、不動産オーナーには、その「トレンド」を読めるかが重要です。従来のやり方に固執するのではなく、最新のトレンドを踏まえて柔軟に資金計画を見直すことが、投資の安定性を高める鍵となります。

オーナー自身が「リスクを想定し、備える姿勢」を持つことで、融資環境を味方につけ、より持続的で収益性の高い不動産投資を実現できます。

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クラウド管理編集部

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