「不動産を売却すると税金はいくらかかるの?」と不安に思う方は少なくありません。
実は、不動産売却時の税金は「所有期間」や「特例の適用」によって大きく変わります。
本記事では、譲渡所得の仕組みや短期・長期の税率、節税に役立つ特例、そして確定申告の流れまでを体系的に解説します。最後まで読むと、自分の売却にどの程度の税金がかかるのかイメージでき、適切な節税準備ができるようになります。
目次
不動産売却でかかる税金の基本を理解しよう

不動産売却で得られた利益は「譲渡所得」と呼ばれ、通常の給与所得などとは別に分離課税されます。課税される税金は大きく「所得税」「住民税」「復興特別所得税」の3種類で構成されます。
譲渡所得とは
譲渡所得は「売却価格−(取得費+譲渡費用)」で算出される利益部分を指します。たとえ売却代金を手にしても、購入時の費用や売却に伴う経費を差し引いた純粋な利益にだけ課税されます。
課税のタイミング
不動産を売却した年に納税するのではなく、翌年の確定申告で税額を計算し、申告・納付を行います。売却益が出た年は、翌年の納税資金を確保しておくことが重要です。
課税されないケース
売却で損失が出た場合(赤字)は課税されません。また、後述する「3,000万円特別控除」が適用されると課税所得がゼロになるケースもあります。
短期と長期で変わる税率

不動産売却益の税率は、所有期間によって大きく異なります。
短期譲渡所得(所有期間5年以下)
税率は所得税・住民税・復興特別所得税を合計して約39.63%。ほぼ利益の4割が税金として課されるイメージです。投資用物件を短期間で売却した場合は負担が大きくなります。
長期譲渡所得(所有期間5年超)
税率は約20.315%。短期に比べて半分程度に抑えられるため、売却のタイミングを調整するだけで節税効果が生まれることもあります。
所有期間の数え方
判定は売却年の「1月1日」における所有期間で行います。例えば2018年6月に取得した不動産を2023年12月に売却しても、2023年1月1日時点でまだ5年未満なので「短期譲渡」となります。相続や贈与で取得した場合は、被相続人や贈与者の所有期間を引き継げる点も重要です。
課税譲渡所得の計算式と内訳

税額を計算するには、まず「課税譲渡所得」を算出します。計算式は以下の通りです。
課税譲渡所 =譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)−各種特例控除
国税庁
課税譲渡所得を計算するときに必要な、費用をそれぞれ項目ごとに紹介します。
取得費に含まれるもの
購入代金・仲介手数料・登録免許税・不動産取得税・建物部分の減価償却費を差し引いた金額が取得費となります。古い建物ほど減価償却によって取得費が小さくなるため、課税所得が大きくなる点に注意しましょう。
譲渡費用に含められるもの
売却時に支払った仲介手数料・印紙税・測量費・建物解体費用・立退料などが該当します。売却に直接必要だったと認められる費用のみが対象です。
取得費が不明な場合
「購入時期が古く、取得費用がわからない」ということもあるでしょう。
国税庁によると、領収書や契約書が残っていない場合は、「概算取得費」として売却額の5%を取得費とすると明記しています。ただし実際の購入額よりも低くなることが多く、税額が増えるリスクがあるため注意が必要です。
節税に役立つ特例・控除制度

不動産売却では複数の特例が用意されており、要件を満たせば大幅に節税できます。
居住用財産の3,000万円特別控除
マイホームを売却した場合、譲渡益から最大3,000万円を控除できる制度です。所有期間に関係なく利用でき、税額がゼロになるケースも多くあります。ただし過去2年以内に同じ控除を利用している場合は適用できません。
軽減税率の特例
所有期間が10年を超える居住用財産で、3,000万円控除を差し引いた後の課税所得が6,000万円以下なら、通常の長期譲渡よりも低い税率(所得税10.21%・住民税4%)が適用されます。
買換え・交換の特例
居住用財産を売却して新しい住宅に買い換える場合、譲渡益の課税を将来に繰り延べることができます。ただし将来売却するときにはまとめて課税されるため、デメリットも理解して選択する必要があります。
相続空き家の特例
一定の要件を満たす相続不動産(空き家)を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。適用には耐震リフォームや解体などの条件があるため、早めに確認が必要です。
確定申告と納税の流れ

不動産を売却したら、翌年に確定申告が必須です。期限や書類を準備しておきましょう。
必要書類一覧
不動産売却の確定申告を行う時は、以下の書類を揃える必要があります。
- 売買契約書
- 仲介手数料の領収書
- 登記事項証明書
- 計算明細書
- 各種特例の証明書類
証憑が揃わないと控除を受けられないので注意してください。
申告と納付のスケジュール
確定申告期間は原則として翌年の2月16日から3月15日までに行います。納税は申告時に一括で行うか、口座振替が利用可能です。
住民税は6月以降に市区町村から納付書が届きます。
よくある申告ミス
所有期間の判定ミスや特例の適用漏れ、建物の減価償却を忘れるケースが多く見られます。誤申告すると追徴課税の可能性もあるため、慎重に確認しましょう。
相続や非居住者など特殊なケースの注意点

通常の売却と異なる扱いになる場合があります。
相続不動産の売却
相続で取得した不動産は、被相続人の取得日・取得費を引き継ぎます。そのため古い物件を相続した場合、長期譲渡として有利に扱えることがあります。
非居住者の場合
日本に住んでいない人が国内不動産を売却する場合、買主が売却代金の10.21%を源泉徴収し、納税する仕組みになっています。その後、確定申告で精算する必要があります。
共有名義の場合
夫婦や親子で共有している場合は、持分割合に応じて譲渡所得を計算します。贈与や相続と混同しないよう整理することが大切です。
まとめ|知識と準備で不動産売却の税負担を最小化

不動産売却では所有期間と特例の有無によって税額が大きく変わります。
特に3,000万円特別控除や軽減税率の特例は、多くのケースで節税効果を発揮します。早めに取得費や譲渡費用の証憑を整え、申告書類を準備しておくことが税負担を抑えるカギです。
不明点がある場合は税理士に相談し、安心して売却と納税を進めましょう。