賃貸経営を行う上で、オーナーを悩ませる問題の一つが修繕費です。「急ぎの修繕だから」「修繕費の相場が分からないから」という理由から、管理会社任せにしている方も多いでしょう。
しかし場当たり的な対応をすると、不要なコストや資産価値の低下につながる恐れがあるため注意が必要です。
この記事では、目先の修繕費を抑える方法だけでなく、将来的な収益や資産価値を高めるための「節約戦略」までを徹底解説します。
最後まで読めば、修繕費の節約方法が分かり将来への漠然とした不安を解消できます。「不動産運用で損をしたくない」「長期的な収入源として適切な対策をしたい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。
賃貸経営における修繕の種類と費用相場

ここでは賃貸物件管理で発生する修繕費を以下の3つのパターンに分けて、それぞれの具体的な内容や費用相場を紹介します。
「管理会社から送られてきた見積書が適性か」「節約できるところはないか」を判断するためにも、修繕のパターンや費用相場を事前に把握しておきましょう。
なお以下の費用相場は、あくまで概算の目安です。物件の立地や劣化状況、工事内容によって大きく変動するため、詳細は必ず専門業者へお問い合わせください。
退去時の修繕(原状回復)の費用相場
以下はワンルーム(約25㎡)を想定した、原状回復費の一般的な相場です。
工事内容 | 費用相場(材料費+工事費) |
---|---|
壁・天井のクロス張替え | 4~7万円 |
床材の張替え(CFシート) | 3~5万円 |
ハウスクリーニング | 2.5~4万円 |
合計 | 10~20万円 |
入居者の退去時に発生する原状回復費用のうち、通常の範囲での使用による劣化分は、国土交通省のガイドラインに基づきオーナー負担が原則です。
突発的な修繕(設備交換など)の費用相場
以下の表は、設備交換の費用相場をまとめたものです。
交換する設備 | 費用相場(本体価格+工事費) |
---|---|
給湯器 | 10~25万円 |
エアコン(壁掛け) | 7~15万円 |
トイレ(便器+タンク) | 10~20万円 |
この他にも、水漏れや窓ガラスの破損、害虫の発生も突発的に起こります。入居者の生活に直結するトラブルも多いため、迅速な対応が必要です。
計画的な修繕(大規模修繕など)の費用相場
大規模修繕費の相場は以下の通りです。ここでは、木造2階建て・8戸程度のアパートを想定しています。
工事内容 | 費用相場 |
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外壁塗装(足場代込み) | 150~300万円 |
屋根の塗装・防水工事 | 50~150万円 |
共用部(廊下・階段)の長尺シート | 50~100万円 |
外壁塗装や屋上防水などの大規模修繕は、賃貸経営で特に高額な支出項目です。一方で、資産価値の維持や向上に大きく影響する重要な工事ともいえます。
修繕費節約に効果的な3つの方法

修繕費節約に効果的な方法は、次の3つです。
修繕費は高額な反面、正しい知識を身につければオーナー自身でコントロールすることが可能な費用です。
ここからは各方法のポイントや注意点について解説するので、ぜひ修繕費の節約にお役立てください。
相見積もりをとる
物件を修繕する際は、複数の業者から見積もり(相見積もり)をとりましょう。
修繕費の内訳には、材料費や工事費のほかに業者の利益や諸経費も含まれています。同じ工事内容であっても、依頼する業者によって最終的な金額は大きく変わるため注意が必要です。
しかし1社だけの見積もりでは、提示された価格が適正かどうかを判断するのが困難です。複数の見積もりを比較し、費用感や提案されている工事の必要性を見極めましょう。
ただし、費用の高低だけにとらわれて依頼先を決めるのはおすすめできません。見積もりを比較する際は 金額面に加え、工事後の保証期間やアフターフォローの有無、担当者のレスポンスの速さなどのサポート面の確認も大切です。
火災保険を活用する
台風や大雪、突発的な事故による破損は、オーナーが加入している火災保険でカバーできる可能性があります。
火災保険は「火事」だけでなく、「風災・雪災」や「建物外部からの物体の飛来・衝突」「給排水管の事故による水漏れ」など、補償範囲が幅広いのが一般的です。
例えば台風でアパートの屋根の一部が破損した場合、火災保険の風災補償が適用されれば自己負担額(免責金額)を超える修繕費を保険金として受け取れる場合があります。
本来払う必要のなかったコストを負担することのないよう、自然災害や事故が原因と思われる修繕が発生した際は、まず保険代理店に相談することが鉄則です。
なお保険会社への申請書類作成や交渉を代行する「火災保険申請サポート業者」の中には、悪質業者が潜んでいるケースもあるため、利用の際には十分注意しましょう。
DIYに挑戦する
修繕箇所が軽微な場合は、オーナー自身でDIYすることで費用を抑えられます。
専門業者に依頼した場合の費用には、材料費に加えて技術料や出張費などが含まれています。しかしDIYであれば、ホームセンターで調達する材料費のみで修繕が可能です。
例えば、蛇口からの水漏れは多くの場合内部パッキンの劣化が原因です。専門業者に頼めば1〜1.5万円程度かかりますが、パッキン自体は数百円で購入できます。動画サイトなどを見れば初心者でも十分交換可能なため、DIYに挑戦する価値は大きいといえます。
ただし、DIYには絶対に手を出してはならない専門領域があります。特に「電気配線に関わる工事(コンセントの増設など)」や「ガス管の接続工事」などは、専門の資格がなければ法律で禁じられています。
安全に関わる重大な事故に繋がりかねないため、必ず専門業者に依頼してください。自分のスキルや時間と相談しながら、無理のない範囲でDIYを取り入れてみましょう。
節約の先にある収益の維持・拡大に必要な2つの戦略

修繕費をコントロールする目的は、単に修繕費の削減だけではありません。オーナーとしての最終的なゴールは、無駄な出費を抑えて適切なタイミングで物件を修繕し、資産価値の長期的な維持、向上を実現することです。ここでは、そのための2つの節約戦略をご紹介します。
不動産経営は長期戦です。目先のコスト削減に加え未来を見据えた視点を持つことで、安定経営を目指しましょう。
長期修繕計画の作成
オーナーは場当たり的な修繕から脱却するために、長期修繕計画を策定しましょう。
長期修繕計画では「将来いつ」「どの箇所に」「いくらくらいの修繕が必要になるか」を可視化します。
例えばマンション1棟の外壁を1,000万円かけて外壁を修繕するとします。国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」によると、外壁の修繕サイクルは12年が目安です。
この目安をもとに12年間の月々の積み立て額を計算すると約7万円の積立が必要とわかります。計画的な資金積立ができれば、高額出費に慌てることなく最適なタイミングで適切な工事を実施できます。
「何から始めたらいいか分からない」という方は、金額の大きな項目から作成しましょう。分からないことがでてきたら、管理会社や税理士などの専門家への相談をおすすめします。
バリューアップのための投資
修繕の際は「この支出で物件の価値をどう高められるか」という投資家としての視点も持ちましょう。
修繕は古くなったり壊れたりした箇所を元に戻す作業ではなく、少しの工夫で物件に付加価値をつけられるチャンスでもあります。
例えば退去後の原状回復でクロスの張替えが必要になった際、ありふれた量産品を使えば最低限のコストで修繕が可能です。一方クロスの一部にデザイン性の高いアクセントクロスを採用すれば、費用は上乗せされるものの部屋の印象が変わり、競合物件との差別が図れます。
入居希望者への訴求力を高められるため、将来的な空室期間の短縮や家賃の安定化にも役立ちます。
このように修繕を「投資のチャンス」と捉え、節約で浮いた費用で小さな工夫を続けることが、長期的な収益維持・向上の秘訣です。
まとめ
今回の記事では、賃貸物件の修繕費節約方法から長期的な修繕・投資計画立案の重要性までを解説しました。
不動産経営における修繕費の節約とは、闇雲に支出を削ることだけではありません。修繕費をコントロールし戦略的に投資することで、長期的な資産価値の向上を目指しましょう。