マンション・アパート経営および不動産投資をする際、気をつけないといけないのが管理です。そして管理方法には、「自主管理」「委託管理」の2つがあることをご存じでしょうか。
2つのうちのどちらかを選ぶことによって、収益性や管理の手間などに違いが生じるため、どちらが自分に適しているのか、両者の違いをはっきりと覚えておくことが必要です。
この記事では、自主管理・委託管理の違いやメリット・デメリット、そして向いているタイプなどを、わかりやすく解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
自主管理と委託管理、それぞれの特徴と概要

マンション・アパートの管理方法である自主管理と委託管理は、どのような違いがあるのでしょうか。次より両者の特徴について説明します。
自主管理の定義とオーナーの主な業務内容
自主管理とは、オーナー自身(または管理組合)が、マンション・アパートの運営・管理を担当する管理方法です。
これらの業務をすべて自身で行います。
委託管理の定義と不動産管理会社の役割
委託管理とは、自主管理の際にオーナーおよび管理組合が担当するすべての業務を、不動産管理会社に代行してもらう管理方法です。
これにより、自主管理でやらなくてはいけない多くの業務から解放されますが、管理会社への代行手数料の支払いが発生します。
どちらが多い?管理方法の実態調査データ
マンションの管理方法には「自主管理」と「委託管理(全部委託・一部委託)」の大きく2つがあります。では、実際にはどちらが多いのでしょうか。
最新の調査によると、自主管理の割合は全体のごく一部にとどまっており、圧倒的多数は委託管理を選択しています。
マンション管理業協会「令和6年マンション管理受託動向調査」によると、受託対象外となる「自主管理物件」の割合は、棟数ベースで約6%、戸数ベースで約4%にとどまっています。
東京都住宅政策本部「マンション管理の実態」でも、約9割のマンションが何らかの形で管理会社へ委託していることが確認されています。
自主管理のメリット・デメリット

マンション・アパートの管理方法の1つである自主管理には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下より説明します。
自主管理のメリット
自主管理のメリットは、コスト削減が実現する点です。自主管理はすべて自分で業務を行うため、管理会社への委託手数料を支払う必要がありません。不動産投資であれば管理コストを抑えられ、利回り向上に直結できます。
マンションの管理にかかる費用総額は 月で平均17,103円 です。
上記の平均額は自主管理・委託管理の総合的な平均なので、委託管理よりコストがかからない自主管理であれば、コストと平均以下に抑えられます。
物件の状態や入居者を直接把握できるのも、自主管理のメリットです。住民同士やオーナー同士が関わるため管理意識が高まり、住環境維持やトラブル抑止につながります。
自主管理のデメリット
自主管理のデメリットは、時間と労力がかかる運用負担です。清掃・設備点検・会計・クレーム対応など、幅広い業務を自身で担う必要があり、時間的・体力的負担が大きくなります。
そして、自主管理の管理人は、トラブル対応や専門知識も習得しないといけません。滞納対応・修繕業者との調整・法規知識など、専門性が求められる場面が多く、対応ミスは資産価値低下や法的リスクにつながります。
騒音・滞納・苦情対応・漏水電気系統の故障といった緊急事態に対して、管理人および管理組合が迅速に対応できなければ、入居継続や資産価値に重大な影響を及ぼします。
委託管理のメリット・デメリット

委託管理のメリット・デメリットについて説明します。
委託管理のメリット
委託管理のメリットは、管理業務のアウトソーシングにより手間が省ける点です。物件の運営にかかわる日常業務を専門会社が担ってくれるため、オーナーの負担が大きく軽減されます。
専門家による適切な入居者管理・設備対応を代行してもらえることも、委託管理のメリットです。法令・契約・メンテナンスなど専門知識を持つ担当者の対応で、物件の長期的な安定経営が期待できます。
委託管理のデメリット
委託管理のデメリットは、管理委託費用による利回りへの影響がある点です。 管理手数料は家賃の約5%が相場で、業務内容により3~8%とばらつきがあります。
委託管理のデメリットとして、管理会社とのコミュニケーション不足が挙げられます。依頼内容と実際の対応にズレが生じたり、対応が遅れたり、サービスの質にばらつきが出るケースもあります。
委託管理会社に代行を任せると、入居者への対応内容が見えにくく、オーナーの意図した管理が行われていない可能性があります。
こうしたリスクを避けるには、複数の管理会社の提案を比較し、手数料と業務内容のバランスを見極めることが大切です。さらに、全部委託・一部委託といった形態から、物件に合った方式を柔軟に選ぶ視点も欠かせません。
自主管理と委託管理、どちらが向いているか?タイプ別診断

マンション・アパートを管理する際は、自主管理と委託管理のどちらが自分に適しているかを事前に見極めることが大切です。以下で診断のポイントを解説します。
時間・労力をかけられるか?自己のライフスタイルで判断
自主管理が向いているのは、時間に余裕があり管理業務を前向きに取り組める人です。逆に、本業や家庭と両立するのが難しい人は、委託管理を選ぶほうが安心です。
投資スタイル別の選択(短期利益重視 vs 長期安定運用)
投資スタイルの違い・考え方によって、管理方法も異なります。
委託手数料という出費があっても、じっくりと時間をかけて回収する考えがある人は、委託が向いています。
物件規模・エリアによる適正な管理方法の選び方
管理する不動産が小規模(~50戸程度)の地方物件の場合、自主管理が採用されやすい傾向です。一方、大規模・都市部物件では業務量が増えるため委託管理が主流となっています。物件の規模に合わせて、管理方法を選びましょう。
最新の管理設備とテクノロジーの導入も検討しよう

マンション・アパートの管理を行うには、設備・環境を見直すことも大事です。その具体例を紹介します。
スマートロックやIoT機器による自主管理の効率化
スマートロック・遠隔監視・エネルギー管理システムを導入することで、入退去対応や設備状況の把握が効率化され、自主管理でも一定の業務軽減が可能です。
クラウド型管理システムやアプリを活用した委託管理の高度化
クラウド管理プラットフォームにより、会計管理・入居者情報・修繕記録をリアルタイムで共有でき、管理の透明性と効率が向上しています。
遠隔地物件の管理における最新ソリューションの活用法
オンライン内見やリモート監視、ビデオ会議機能の活用により、遠隔地でも物件運営が可能になっています。特に、副業で賃貸経営を行うオーナーにとっては大きなメリットです。
管理方式による利回り・投資効果の違い

マンション・アパートの管理は、その方法によって利回り・投資効果に異なる影響が出るのが特徴です。その違いについて説明します。
管理コストの違いが年間収益に与える影響
自主管理・委託管理の、管理コストを比較してみましょう。
ただし、自主管理であればあらゆる業務を一任する必要があり、労力を費やします。
空室率や入居者満足度との関連性
自主管理ではきめ細かい対応が可能な一方、対応遅延の場合は入居者満足度低下・空室率増加につながるのがリスクです。委託管理では、専門体制での対応で安心感を提供できます。
融資審査や税務面での影響比較
安定した収益と管理体制がある委託管理物件は、金融機関の評価が高く融資審査で有利になることがあります。また、帳簿が整理された管理体制は税務にも安心です。
オーナーが気をつけたい管理トラブルとリスク対応策

管理において重要なのがトラブル対策です。トラブル対策の内容を説明します。
入居者トラブル(騒音・滞納・クレーム)への対応方法
入居者へのトラブル対応には、以下のポイントを押さえる必要があります。
管理種類 | 対応方法 |
---|---|
自主管理 | • 管理規約・管理規制を整備し、責任者を明確化 • 滞納者には書面督促、必要時は専門家(マンション管理士、弁護士)活用 |
委託管理 | • 管理会社に対応業務を明確に定義 • 報告のタイミングや内容を事前設定 |
トラブルが起きた場合、焦らずに冷静に対処することが大切です。トラブルを起こす人物は感情的になっている人、やっかいな人が少なくないため、事務的かつルール・法律に沿っての行動・対処を実践しましょう。
設備トラブル(漏水・電気系統)時の緊急対応体制
設備の不具合が生じた場合の対応は、以下の通りです。
管理種類 | 対応方法 |
---|---|
自主管理 | • 緊急対応業者リストの作成 • 連絡網の整備 • 訓練も含めた対応フロー構築 |
委託管理 | • 24時間対応オプションの確認 • 業者品質・スピードを見極め契約 |
事前にトラブルの種類を把握して、迅速に対応・問題解決をすることが大事です。
管理記録・契約書類の適切な管理方法
書類・記録などの管理方法は、以下の通りです。
クラウド導入であれば、膨大なデータを簡単に保管・共有できます。
まとめ

自主管理・委託管理のどちらかを選択するポイントは、「目的」と「状況」を明確にすることです。
自身の投資目的・物件規模・ライフスタイルを見つめ直し、それに見合った最適な方法を選択する必要があります。
自主管理・委託管理の特徴および自身の生活・経済状況を把握して、円滑な管理を行いましょう。