この記事の3行まとめ
- マンション投資の節税は、帳簿上の赤字と給与所得を相殺する仕組み
- 実質的な節税の恩恵を受けられるのは、課税所得900万円(年収1,200万円)超の層のみ
- 目先の還付金だけでなく売却時の税金も含めた最終の手取り額で判断することが大事
「マンション投資で節税対策ができる」という営業トーク。魅力的に聞こえる一方で、「本当にそんなうまい話があるのか?」「後で損をするのではないか?」と不安を感じていませんか?実際、仕組みを理解せずに節税目的だけで投資を始め、キャッシュフローの悪化に苦しむケースは少なくありません。
この記事では、マンション投資の節税の「本当の仕組み」と、損をしないために確認すべき具体的な判断基準を解説します。営業トークに惑わされず、資産を守るための「見極める力」を身につけましょう。
マンション投資の節税が「嘘」と言われる理由

マンション投資における節税は、決して嘘ではありません。それでも「嘘」と言われてしまう理由は、「節税=お金が増える」と誤解して契約し、実際にはキャッシュフローが悪化して損をする人があとを絶たないからです。
そもそも不動産投資の節税とは、意図的に「不動産所得の赤字」を作り出し、給与所得から差し引くことで税金を減らす仕組みを指します。「現金の支出を伴わない経費」をうまく使い、帳簿上の赤字を作ることがポイントです。
なぜ手取りが増える?「経費」と「損益」の相殺ロジック
マンション投資を行うとなぜ手取りが増えるのでしょうか。理由は、不動産投資特有のルールと税制の仕組みにあります。複雑に見える節税ロジックを、要素ごとに整理しました。以下の表で、それぞれの役割と全体の流れを確認してみましょう。
| 項目 | 内容・仕組み | 効果 |
| 基本の仕組み | 損益通算→不動産投資で生じた赤字を、会社員の給与所得から差し引くことができる | 給与所得と赤字を相殺することで課税所得を減らし、所得税や住民税を減らして還付金を受け取れる |
| 具体的な事例 | 給与所得 1,000万円+不動産所得 ▲100万円 | 課税対象となる所得が900万円になる(本来払うべき税金より安くなり、差額が戻る) |
| 節税の核心 | 減価償却費→建物や設備の経年劣化による価値減少分を毎年経費として計上するもの | 実際の現金支出はないが帳簿上は経費になるため、手元の現金を減らさずに「会計上の赤字」を作り出せる |
実際に現金支出がないのに、帳簿上は経費として計上できるので、手元の現金を減らさずに赤字を作り出すことが出来るのです。これが、マンション投資が節税になると言われる要因です。
「節税=会計上の赤字」にはキャッシュフローのリスク
以下に、節税の裏側に潜む資金繰りのリスクをまとめました。
- 節税の実態は「赤字事業」:節税ができるということは、税務上は「赤字」の状態。現金の出ない経費があるとはいえ、ローン利息や管理費などの現金支出が多ければ、手元のお金は確実に減ります。
- 「元金返済」は経費にならない: 見落としがちなローンの元金返済分。これは経費として認められないので、「帳簿上の利益」と「手元の現金」にズレが生じる原因になります。
- 陥りやすい2つの危険な状態:元金返済の負担で「帳簿上の黒字でも現金がマイナスになる状態」や、節税できているつもりでも「節税額以上に毎月の現金支出が発生し続けている状態」です。
節税額以上に現金の支出が発生しては本末転倒です。節税はプラスアルファのメリットに過ぎないため、まずは投資としての「収益性」が確保されているかを確認しましょう。
損をしないために確認すべき2つの重要指標

節税目的でマンション投資を検討する際、営業マンの話をそのまま信じるのは危険です。営業マンは販売のプロですが、税務や個人の資産形成のプロではないことが多いからです。
節税効果が十分に得られる年収ラインと、出口戦略における税金の影響は、契約前に必ず確認すべき重要事項です。投資判断の分かれ目となる2つの指標について解説します。
①年収と課税所得のライン
マンション投資の節税効果は、誰でも得られるわけではありません。節税の恩恵は自身の「税率」に大きく依存するため、具体的な年収ラインを知っておくことが大切です。
- 節税効果は「税率の高さ」で決まる:所得税は年収が高い人ほど税率が高くなる。同じ赤字額をでも、高所得者ほど還付される税金が多くなる
- 目安は「年収1,200万円(課税所得900万円)」:課税所得が900万円を超えると、所得税率が33%に上がり、住民税10%と合わせて計43%の税率になる*1。年収1,200万円を超える高所得者層が初めて、リスクに見合う節税効果が得られる
- 年収が低い場合の注意点 :税率が低い段階では、メリットは薄くなる。節税効果よりも投資リスクが上回る可能性が高いため、慎重な判断が必要
*1引用:国税庁『所得税の税率』(2025年4月)
つまり、年収1,200万円未満の方にとって「節税」は投資の決め手にはなりません。自身の年収状況と照らし合わせて判断しましょう。
②売却を含めた最終の手取り額の試算
不動産投資の成功は、毎年の節税額ではなく、売却時の損益を含めた最終の手取り額で決まります。失敗しないために押さえておくべきポイントは以下の通りです。
- 最終の手取り額で判断:保有期間中の節税額だけでなく、売却時の損益まで含めてプラスになるかを確認
- 「譲渡所得税」を考慮:売却益には、保有期間に応じて約20%〜39%の税金がかかる。利益がそのまま手元に残るわけではない*2
- 減価償却の「落とし穴」に注意:毎年の節税(減価償却)を行うほど物件の「帳簿上の価値」が下がる。そのため売却時の利益が大きく計算され、税金が高くなる
*2引用:国分ハウジング「長期譲渡所得とは?短期との違いや税額の計算方法・特例をわかりやすく解説」(2023年2月)
売却時の税金を支払った後でも本当に利益が残るのか、契約前にしっかりと試算することが大切です。
まとめ|節税目的だけの投資は危険!収益性もしっかり確認しよう

マンション投資における節税は、仕組みを正しく活用すれば有効な手段です。しかし、あくまで投資の「複字的なメリット」に過ぎず、それだけを目的に契約するのは危険です。
本記事で解説した通り、実質的なメリットを得るには、およそ年収1,200万円(課税所得900万円)以上の属性が必要不可欠です。また、毎年の還付金だけで判断せず、売却時にかかる税金を差し引いた「最終的な手取り額」でプラスになるかを見極める視点も欠かせません。
営業マンから提案を受けた際は、一度「節税効果」を完全に除外して収支を計算してみてください。純粋な賃貸経営として黒字、あるいは許容範囲の収支であれば、そこで初めて節税効果がプラスの材料として機能します。
目先の還付金や営業トークに惑わされることなく、数字に基づいた冷静なシミュレーションを行い、ご自身の資産を守るための判断を下しましょう。