高齢化・所有者不明マンションの救済策!成功した管理組合の実例集

この記事の3行まとめ

  • 高齢化と所有者不明問題は「二つの老い」としてマンション価値を脅かす重大課題
  • 2025年の区分所有法(マンション管理に関する法律)改正により、決議要件の緩和や所在不明者への対応策が整備された
  • 先進的な管理組合は、規約改正や第三者管理方式で危機を乗り越えている
目次

深刻化する「二つの老い」とマンション管理不全の実態

日本には多数のマンションがあり、多くの国民が居住しています。しかし現在、その大半が「建物の老い」と「人の老い」という二つの課題に直面しているのです。

建物の老朽化は年々進行しており、今後も加速度的に増加する見込みです。一方で、区分所有者(マンションの各部屋の所有者)の高齢化により役員不足・総会出席率低下・合意形成の困難化といった問題が深刻化しています。実際、築年数の経過したマンションの多くが「管理不全・管理不良」状態に陥っているとい

「たった一人の所在不明者が、マンション全体を崩壊させることもある」――この言葉は大げさではありません。管理費滞納、総会成立の困難、専有部分の荒廃などが連鎖し、資産価値の下落という悪循環を引き起こす危険性があるのです。

2025年区分所有法改正がもたらす救済策

こうした課題に対応するため、2025年5月に「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための法律」が成立しました(2026年4月施行予定)。
これにより、老朽化・所有者不明マンションへの救済策が整備されます。

改正ポイント内容
修繕決議の要件緩和集会出席者の過半数で修繕等を決議可能に
所在不明所有者対応裁判所認定の所在不明者を投票数の計算対象から除外可能に
管理不全専有部制度(管理されていない部屋を裁判所が管理する制度)裁判所選任の管理人が管理不全住戸を管理
多様な再生手法の導入一括売却・リノベーション・取壊しを多数決で決定可能に
行政関与の強化地方自治体が介入・支援できる権限を強化

これらの改正は、従来の厳格な決議要件を緩和し、管理不全マンションの再生を現実的に進めるための重要な一歩となるでしょう。

成功事例1:所有者不明問題を克服した取り組み

東京都内の築年数が経過したあるマンションでは、複数の所有者不明住戸があり、総会の成立が危ぶまれていました。そこで管理組合は以下のような取り組みを実施したのです。

まず、管理規約を改正し、連絡先届出義務と長期不在時の代理人選任義務を追加しました。次に弁護士と連携して戸籍・住民票調査を実施し、一部住戸の相続人を特定して連絡を回復させています。

滞納が続く住戸に対しては法的対応として競売を申し立てました。さらに、コミュニティ活性化策として防災訓練やイベントを開催し、異変を早期に察知できる体制を整備したのです。

この結果、所在不明者問題を段階的に解消し、管理体制を再構築することに成功しました。「予防」と「対応」の両面でバランスを取った好例と言えるでしょう。

成功事例2:高齢化対応で再生を果たしたマンション

神戸市の築年数が経過したマンションでは、居住者の高齢化が進み、理事のなり手不足が深刻化していました。そこで管理組合は次のような改革を行ったのです。

  • 第三者管理方式の導入:マンション管理士を外部管理者として選任し、役員負担を軽減
  • IT活用の推進:オンライン総会を導入し、自宅からの参加を可能に
  • 自治体との連携:管理適正化推進計画を活用し、専門家派遣と補助金を獲得
  • 長期修繕計画の見直し:現実的な計画に改訂し、積立金を適正水準に調整

その結果、「管理計画認定制度」の認定を取得し、資産価値の向上にもつながりました。

管理組合が今すぐ取り組むべき対策

 管理不全化を未然に防ぐためには、問題が顕在化する前に具体的な行動を起こすことが重要です。

対策項目実践方法
定期的な所有者情報更新年1回の連絡先確認、相続発生時の届出体制の整備
管理規約の見直し標準管理規約(マンション管理のひな型となる規約)の最新版に準拠し、電子化・IT対応を明記
専門家活用体制の構築マンション管理士や弁護士との顧問契約を締結
デジタル化の推進総会・議決権行使のオンライン化、高齢者向けIT講習の実施
地域・行政との連携支援制度の活用、自治体や地域コミュニティとの協働体制の確立

これらの対策を段階的に導入することで、管理不全化のリスクを大幅に減らすことができます。

まとめ:持続可能なマンション運営の実現に向けて

2025年の区分所有法改正は、管理不全マンションにとって「治療薬」ともいえる内容ですが、最も重要なのは予防の意識です。
所有者不明問題や高齢化による機能不全に陥る前に、早期の対応を進めることが資産価値を守る鍵になります。

成功事例に共通するポイントは以下の5つです。

  1. 規約と体制の現代化
  2. 専門家との連携
  3. コミュニティの活性化
  4. 行政支援の活用
  5. 情報の透明化とデジタル化

マンションは個人の住まいであると同時に、社会全体の資産でもあります。
「二つの老い」を乗り越え、次世代に引き継げる価値ある住まいとするために、法改正を活用し、管理組合自らが積極的に予防・改善へ取り組むことが求められます。
今こそ、持続可能なマンション運営への第一歩を踏み出す時です。

著者

クラウド管理編集部

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