導入文
不動産投資で多くのオーナーが直面するテーマが「減価償却」です。専門用語に難しさを感じる方も多いですが、実は税負担を軽くし、キャッシュフローを安定させるための重要な仕組みです。知らないままでは節税の機会を逃すことになります。この記事では、初心者でも理解できるように減価償却の基本、計算方法、節税効果、注意点まで丁寧に解説します。
目次
- はじめに|不動産投資と減価償却の重要性
- 減価償却とは?不動産投資に欠かせない基礎知識
- 減価償却の基本的な仕組み
- 建物と土地の違い
- 不動産投資における減価償却の役割
- 減価償却の種類と計算方法
- 定額法と定率法の違い
- 建物構造ごとの耐用年数
- 簡単なシミュレーション例
- 減価償却による節税効果
- 課税所得の圧縮効果
- キャッシュフローへの影響
- 青色申告との相性
- 減価償却の注意点とリスク
- 節税だけを目的にしない重要性
- 売却時に発生する税金への注意
- 税理士に相談すべき理由
- 中古物件と設備の減価償却
- 中古物件の耐用年数の考え方
- 設備(エアコン・給湯器など)の減価償却
- 減価償却と融資・法人投資の関係
- 融資評価に与える影響
- 法人化による減価償却メリット
- まとめ|減価償却で賢く投資する
減価償却とは?不動産投資に欠かせない基礎知識

減価償却とは、建物や設備の購入費用を耐用年数に応じて分割し、毎年経費にできる仕組みです。例えば建物1,000万円を耐用年数20年で購入すれば、毎年50万円を経費にできます。実際の支出を伴わずに帳簿上の経費を増やせるため、投資家にとって強力な節税手段です。
建物と土地の違い
減価償却できるのは建物部分のみで、土地は対象外です。土地は価値が減らないとみなされるためです。例えば5,000万円の物件を購入し、土地2,000万円・建物3,000万円と評価された場合、減価償却の対象は建物3,000万円部分となります。購入時の按分が不明確だと節税額を見誤る可能性があるため注意が必要です。
不動産投資に重要な理由
家賃収入がそのまま利益になるわけではなく、管理費や修繕費、固定資産税など多くの支出があります。減価償却を計上すれば課税所得を圧縮し、税金を減らせます。例えば家賃収入500万円、経費100万円の場合、課税所得は400万円ですが、減価償却80万円を計上すれば320万円に下がり、税額も大幅に減ります。つまり減価償却はキャッシュフローの改善に直結するのです。
減価償却の種類と計算方法

定額法と定率法
減価償却には「定額法」と「定率法」があります。定額法は耐用年数で均等に分割する方法で、現在の建物は原則定額法を用います。定率法は初年度に多く経費を計上できる方法ですが、建物については平成28年以降は適用外です。投資家は定額法を基本として理解しておけば十分です。
建物構造ごとの耐用年数
耐用年数は国税庁が定めており、木造は22年、軽量鉄骨造は19〜27年、重量鉄骨造は34年、RC造は47年です。構造が異なると減価償却額も変わります。例えば同じ3,000万円の建物を購入しても、木造なら毎年約136万円、RC造なら約63万円を計上できるため、節税効果は大きく変動します。
簡単なシミュレーション
建物価格2,000万円、木造22年の場合、毎年約91万円を経費にできます。家賃収入400万円、経費100万円なら課税所得は300万円ですが、減価償却で209万円に下げられます。これにより所得税と住民税の合計が数十万円減り、キャッシュフローが増えます。初心者はまず自分の物件でシミュレーションを試みると効果を実感しやすいです。
減価償却による節税効果

課税所得の圧縮
減価償却を経費に加えると課税所得を抑えられます。例えば収入600万円、経費150万円なら課税所得は450万円ですが、減価償却100万円を計上すると350万円に減ります。給与所得と合算されるため、会社員投資家ほど効果が大きくなります。
キャッシュフローへの効果
減価償却は現金を使わない経費のため、手元資金を減らさずに税金だけを減らせます。結果としてキャッシュフローが増え、繰上返済や新規投資に回すことが可能です。金融機関からの融資審査でも、安定したキャッシュフローを維持しているオーナーは評価されやすく、次の投資を有利に進められます。
青色申告との相性
青色申告を活用すれば最大65万円の特別控除があり、赤字を3年間繰り越せます。減価償却で赤字になった場合でも、翌年以降の所得と相殺可能です。長期的な節税効果を狙うなら青色申告は必須といえます。
減価償却の注意点とリスク

節税だけを目的にしない
一部の業者は「節税になる」と強調しますが、物件自体の収益性が低ければ本末転倒です。減価償却は補助的な仕組みに過ぎず、投資の本質は安定した収益と資産価値にあります。
売却時の税金に注意
減価償却を行うと帳簿価額は下がります。例えば建物を2,000万円で購入し10年間で900万円を償却した場合、簿価は1,100万円です。これを2,000万円で売却すると900万円の譲渡益が発生し課税対象になります。出口戦略を含めたシミュレーションが必要です。
税理士に相談すべき理由
減価償却の計算には建物の按分や耐用年数の判定など専門知識が必要です。また、税制は毎年改正があり、個人判断ではリスクがあります。税理士と相談しながら進めることで安心して節税を行えます。
中古物件と設備の減価償却

中古物件の耐用年数の考え方
中古物件を購入した場合、残存耐用年数を再計算して減価償却を行います。例えば築15年の木造住宅(耐用年数22年)を購入した場合、残り7年ではなく「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」という計算式を用います。これにより、築年数が経った物件でも一定期間減価償却を続けることが可能です。中古物件投資ではこの計算を誤ると節税効果を見誤るため注意が必要です。
設備(エアコン・給湯器など)の償却
建物だけでなく、エアコンや給湯器など設備も減価償却の対象になります。設備の耐用年数は建物より短く、エアコンは6年、給湯器は15年などと決められています。設備投資をうまく活用すれば、経費を計上しながら入居者満足度を高めることができ、空室対策にもつながります。
減価償却と融資・法人投資の関係
融資評価に与える影響
金融機関は物件の収益力とオーナーのキャッシュフローを重視します。減価償却で税金を減らしキャッシュフローを厚くできれば、融資審査においてもプラスに働きます。一方で、帳簿上の利益が小さくなりすぎると融資評価が下がる場合もあるため、バランスを取ることが大切です。
法人化による減価償却メリット
個人投資では所得税の累進課税が重くなりますが、法人化すれば法人税率で計算でき、節税余地が広がります。さらに法人では減価償却の計上方法に柔軟性があり、利益調整を行いやすくなります。一定規模以上の投資を考えるオーナーは法人化も視野に入れると良いでしょう。
まとめ|減価償却で賢く投資する
減価償却は不動産投資に欠かせない節税手段です。
- 建物部分を耐用年数で経費化できる
- 課税所得を圧縮し税金を軽減できる
- 現金流出を伴わずキャッシュフローを改善できる
- 中古物件や設備でも節税効果を活用可能
- 融資評価や法人化との相性も重要
ただし、節税に偏らず収益性や出口戦略を含めた総合的な投資判断が必要です。初心者はまず仕組みを理解し、自分の物件でシミュレーションを試みましょう。信頼できる税理士や不動産会社と協力すれば、長期的に安定した投資を実現できます。