築古物件は安いけれどリスクが怖い 古い物件をどう活用すればいいかわからない こうした悩みを持つ方は多いでしょう。
実は築古物件は、正しい知識と戦略を持って再生・活用すれば、高利回りを狙える投資対象に変えることが可能です。
築古物件の現状、投資メリットとリスク、再生の具体的手法、管理の工夫、購入前のチェックポイント、そして出口戦略までを徹底解説。築古物件投資を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
築古物件の現状と再生の必要性

近年、注目が集まっている築古物件ですが、その活用には現状の理解と再生への意識が不可欠です。次より、築古物件の現状、再生の必要性について説明します。
増加する築古物件のニーズ
近年の日本の総住宅数、空き家に関するデータは以下の通りです。
統計データ- 日本の総住宅数:6,502万戸
- 空き家・900万戸
- 総住宅数に対する空き家の割合:13.8%
一方で台頭しているのが、リフォームやリノベーションを前提とした中古住宅の需要増加です。2023年の住宅リフォーム市場規模は 7兆100億円に達しており、人々が既存住宅に手を加えて住み継ぐという価値観が浸透しつつあることがわかります。
築古物件は価格の安さに加え、現代の画一的な間取りとは異なるユニークな魅力を持つものが多いのが特徴です。自分らしい暮らしを求める若い世代、コストを抑えたいファミリー層からのニーズが高まっているといえます。
築古物件に潜むリスクと課題
築古物件への投資や活用は魅力的な反面、特有のリスクと課題も存在します。その課題についてみてみましょう。
1. 耐震性の問題
建築基準法が決めた耐震基準は、1981年の改正前(旧耐震基準)・改正以降(新耐震基準)によって異なります。
種類 | 基準の内容 |
---|---|
旧耐震基準 | 震度5程度の揺れで倒壊しないこと |
新耐震基準 | 震度6強から7の揺れでも倒壊・崩壊しないこと |
築古物件は、旧耐震基準で建てられている可能性があり、大規模な地震に対する備えが不十分な場合があります。
2. 建材・設備の老朽化
修繕費用が高額になる可能性があります。
3. アスベスト(石綿)含有の可能性
2006年以前に建てられた建物には、耐火性や断熱性を高めるためにアスベストを含んだ建材が使用されている可能性があります。購入前にアスベスト除去が必要かどうか確認することが重要です。
管理面から考える築古物件の再生・活用法

築古物件の管理は、現代のニーズに合わせた改善、トラブルを未然に防ぐ仕組みづくりが重要になります。ここでは、管理の側面から築古物件を魅力的な資産へと再生させるための、具体的な方法について説明します。
最新設備・テクノロジーの導入で管理効率UP
現代のテクノロジーは、築古物件の管理を劇的に効率化し、付加価値を高める力を持っています。
導入すべき最新設備- スマートロックの導入
- スマートエアコン
- スマート照明
- オンラインでの管理ツール活用
あらゆる作業・業務の効率化をテクノロジーによって実現させることによって、入居者・オーナー・管理会社に多大なメリットをもたらしてくれます。
入居者満足度を高める改善ポイント
空室リスクを減らし安定した家賃収入を得るためには、入居者の満足度向上を実現しないといけません。そのためのポイントは以下の通りです。
入居者満足度を高める改善ポイント-
インターネット無料は必須設備
高速Wi-Fi環境を整備することで競合との差別化要因になります。 -
セキュリティ設備の強化
TVモニター付きインターホンやスマートロック導入で入居者の安心感を高められます。 -
水回りの刷新と快適性の向上
トイレ・浴室の最新設備で省エネ・快適な生活を提供。自治体補助金が使える場合もあります。
築古物件ならではの管理トラブルとその対処法
築古物件では、経年劣化による特有のトラブルが発生しやすいため、予防的な管理が重要です。
築古物件ならではの管理トラブルと対処法-
雨漏り、漏水
屋上やバルコニーの排水溝は、落ち葉などで詰まると漏水の原因になるため、定期的な点検・清掃が必要です。入居者には水漏れ保険への加入を推奨し、トラブル時はすぐに報告してもらう体制を整えておくことが大切です。 -
給排水管の詰まり
キッチンや浴室の排水管は、油汚れや髪の毛で詰まりやすくなるため、定期的な高圧洗浄を実施することで、深刻な詰まりや悪臭の発生が防げます。 -
害獣の発生
建物の隙間や配管周りから、ネズミやゴキブリなどの害虫・害獣が侵入することがあります。隙間のパテ埋め、換気扇への防虫網の装着、ゴミ置き場を清潔に保つなど、対策が重要です。
定期的な建物点検と計画的な修繕を行うことが、結果的にコストを抑え、資産価値を守ることにつながります。
定期的な建物点検と計画的な修繕を行うことが、結果的にコストを抑え、資産価値を守ることに繋がります。
投資面から見る築古物件の活用戦略

投資対象としての築古物件は、新築や築浅物件にはない独自の魅力と戦略が存在します。築古物件ならではの投資メリットを最大限に活かし、リスクを管理しながら高いリターンを目指すための具体的な戦略について解説します。
高利回りを狙う!築古物件の投資メリット
築古物件が投資家を引きつける魅力・投資におけるメリットは以下の通りです。
築古物件投資のメリット-
物件価格の安さと高い利回り
築古物件は新築や築浅物件に比べて取得価格が大幅に安いのが特徴です。一方で家賃は築年数に応じても大きく下落しにくく、投資額に対する家賃収入の割合、すなわち「表面利回り」が高くなりやすい仕組みです。 -
資産価値の下落リスクが低い
築20年以上の物件を購入した場合、新築に比べて購入後の資産価値の急落リスクが低く、比較的安定した資産運用が期待できます。 -
税務上のメリット(減価償却)
不動産投資では建物の取得費用を法定耐用年数にわたって経費として計上する「減価償却」が可能です。例えば木造住宅の法定耐用年数は22年であり、短期間で多くの減価償却費を計上できる場合があります。
築古物件の場合、法定耐用年数の残存期間が短い、あるいは経過しているため、短期間で多くの減価償却費を計上できる場合があります。
帳簿上の利益を圧縮し、所得税や住民税を軽減する効果が期待できます。ただし税制は頻繁に改正されるため、確認が必要です。
築古物件購入前のチェックポイント
築古物件は、想定外の出費が生じる可能性もあるため、購入前に必ず重要ポイントを確認しないといけません。そのポイントは以下の通りです。
築古物件購入前のチェックポイント-
建物状況調査(インスペクション)の実施
インスペクションとは専門家による調査です。基礎や外壁のひび割れ、雨漏りの有無、耐力不足や劣化状況などを確認することで、購入前に修繕が必要な箇所や費用を把握でき、リスク管理が容易になります。 -
修繕履歴と長期修繕計画の確認
過去の修繕履歴や今後の長期修繕計画を確認することが重要です。特にマンションの場合、管理組合が保管する書類を必ずチェックしましょう。 -
法的規制と再建築の可否
都市計画法や建築基準法などの規制に適合しているかを確認する必要があります。基準に違反していると資産価値がなくなる恐れがあるため、役所での事前確認が必須です。 -
立地条件と賃貸需要
最寄り駅からの距離、周辺の商業施設や公共施設の充実度、地域の将来性を含めて総合的に判断し、賃貸需要が高いエリアかどうかを見極めることが大切です。
再生後の出口戦略:長期保有 vs 売却
不動産投資では、最終的にどのように手放すかという「出口戦略」を考えておくことも成功の鍵となります。成功のためのポイントは以下の通りです。
築古物件投資の出口戦略-
長期保有(インカムゲイン狙い)
継続的な家賃収入を実現させるシステムがインカムゲインです。リノベーションなどで物件価値を高めることで、入居者が快適に長く住み続けてくれるようになり、安定した収入が得られます。
そのためには質の高い管理と運営が求められますが、築古物件は資産価値の下落が緩やかなため、長期保有戦略と相性が良いといえるでしょう。 -
短期売却(キャピタルゲイン狙い)
安く購入した築古物件にリノベーションを施して付加価値を高め、購入価格よりも高い価格で売却して売却益(キャピタルゲイン)を得るのも戦略の一つです。市場の動向を読み、買い手のニーズに合ったリノベーションを行うセンスが求められます。
なお、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)には税金がかかり、税率は不動産の所有期間によって異なります。
譲渡所得の区分- 短期譲渡所得:売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下
- 長期譲渡所得:5年を超える場合
長期譲渡所得の方が税率が低く設定されています。出口戦略を立てる際には、この税率の違いも考慮に入れることが必要です。
まとめ
日本では空き家・築古物件が増え続けていますが、それはリスクであると同時に大きなチャンスでもあります。築古物件投資は、正しい知識と戦略を持って再生・活用することで、高利回りを狙える資産運用に変わります。購入前の調査や管理体制の工夫、出口戦略の設計を怠らなければ、安定収益を生み出す不動産投資の柱となるでしょう。これから投資を検討する方は、インスペクションや補助金制度の確認、そして専門家への相談から一歩を踏み出してみてください。