不動産投資を計画したとき、「新築と中古、収益性が高いのはどちらだろう?」と考える人が多いのではないでしょうか。 この選択にあたっては新築と中古のそれぞれのメリット・デメリットを理解することが必要です。
本記事では、メリット・デメリットに加えて購入価格や利回りなどの収益性を比較する際のポイントを、FPの資格をもつ筆者が詳しく解説します。新築と中古、どちらに投資すべきか迷っている人は、ぜひお読みください。
不動産投資における新築と中古の選択

不動産投資を始める際、多くの人が直面する最初の大きな選択肢は、「新築物件に投資するか、それとも中古物件に投資するか」という点です。 この選択は、投資の成功を左右する重要な要素であり、それぞれの物件タイプが持つ特性を深く理解することが欠かせません。 新築物件とは、新たに建設され、建設工事が完了してから1年以内、かつ誰も住んだことのない建物です。
中古物件とは新築物件以外の物件を指します。すなわち、すでに誰かが住んでいた、あるいは1年超経過した建物です。 それぞれの選択には、独自のメリットとデメリットがあり、どちらがより収益性が高いかは、一概には言えません。
投資家の目的、資金力、リスク許容度によって、最適な選択は異なります。 本稿では、宅建資格を持ち新築中古の不動産投資ローンを扱った現役銀行員が、新築と中古それぞれの収益性を多角的に比較し、ご自身の投資スタイルに合った選択をするためのヒントを提供します。
新築物件の収益性:メリットとデメリット

新築物件への投資は、多くの投資家にとって魅力的に映ります。しかし、その華やかなイメージの裏には、収益性に影響を与える様々な要因が存在します。
比較項目 | 新築物件のメリット |
---|---|
高い家賃 | 新しさからくる価値で、高い家賃設定が可能です。 |
空室リスクが低い | 人気があるため、入居者がすぐに見つかります。 |
修繕費が安い | 新しいため、当面は大きな修繕費用がかかりません。 |
比較項目 | 新築物件のデメリット |
---|---|
購入価格が高い | 物件価格が中古より高くなります。 |
利回りが低い | 購入価格が高いため、家賃収入に対する利回りは低めです。 |
価値下落 | 築年数の経過とともに、物件の価値は大きく下がります。 |
メリット:安定した家賃収入と低い修繕費
新築物件の最大のメリットは、その新しさから来る安定性です。 まず、新築プレミアムと呼ばれる付加価値により、周辺の同条件の中古物件よりも高い家賃設定が可能です。 新築を好む入居者は多く、入居付けが比較的容易であるため、空室リスクを低く抑えられ、安定した家賃収入を長期にわたって見込めます。
また、新築であるため、当面は大規模な修繕や設備の交換が必要になることはほとんどありません。 初期段階での修繕費用はゼロに近く、修繕積立金も中古物件に比べて低く設定されていることが多いです。 これにより、キャッシュフローが安定し、急な出費に悩まされるリスクが軽減されます。 さらに多くの場合、最新の設備(オートロック、宅配ボックス、インターネット設備など)が導入されており、入居者満足度が高くなり、長期入居を促す要因となります。
デメリット:高い購入価格と初期の利回り低さ
一方で、新築物件には収益性を圧迫するデメリットも存在します。 最も顕著なのは、その高い購入価格です。新築プレミアムは家賃だけでなく、物件価格にも反映されるため、中古物件に比べて多額の初期投資が欠かせません。 これにより、表面利回り(年間家賃収入÷物件価格×100)は、一般的に中古物件よりも低くなります。
また、新築の時期を過ぎると、その「新しさ」という価値は徐々に失われていきます。 築5年〜10年で大きく価値が下がることが一般的です。 将来的な売却を考えた場合、購入価格を下回る可能性が高く、キャピタルゲイン(売却益)を狙うのは難しいケースが多いです。
中古物件の収益性:メリットとデメリット

中古物件への投資は、新築とは異なる魅力とリスクを内包しています。 新築物件の「新しさ」が持つ付加価値とは異なり、中古物件では物件価格の安さが最大の利点となります。 これにより、高い利回りを実現できる可能性が高く、投資家にとって魅力的な選択肢となり得ます。 一方で、築年数の経過に伴う修繕費用や空室リスクなど、新築にはない特有の課題も存在します。
比較項目 | 中古物件のメリット |
---|---|
利回りが高い | 購入価格が安いため、家賃収入に対する利回りが高くなります。 |
選択肢が豊富 | 築年数、立地など、多くの物件から選べます。 |
掘り出し物 | 高い収益性の物件を見つけられる可能性があります。 |
比較項目 | 中古物件のデメリット |
---|---|
修繕費用 | 老朽化により、予期せぬ修繕費用がかかる可能性があります。 |
空室リスク | 新築に比べて入居者が決まりにくいことがあります。 |
家賃下落 | 入居者確保のため、家賃を下げなければならないことがあります。 |
メリット:高い利回りと物件選択の幅広さ
中古物件の最大の魅力は、その高い利回りです。物件価格が新築に比べて安価であるため、家賃収入が同程度であれば、表面利回りが高くなります。 例えば、新築の利回りが4%〜5%であるのに対し、中古物件では6%〜10%を超える物件も珍しくありません。 これにより、少ない自己資金で高いキャッシュフローを確保できる可能性があります。
また、市場に流通している物件数が圧倒的に多いため、物件選択の幅が広がります。 新築物件が特定のエリアやデベロッパーに限定されるのに対し、 中古物件は築年数、立地、広さなど様々な条件から、ご自身の投資戦略に合致する物件を見つけやすくなります。 掘り出し物が見つかれば、高い収益性を実現できる可能性が潜んでいるのです。
デメリット:修繕リスクと空室率の上昇
中古物件投資には、新築にはないリスクが伴います。最も懸念されるのは、老朽化に伴う修繕リスクです。 給湯器、エアコン、水回りなどの設備はいつか故障し、交換が必要になります。 また、屋根や外壁、共用部などの大規模修繕費用も、新築に比べて高くなる傾向があります。 予期せぬ出費は、せっかくの高利回りを圧迫し、収益性を低下させてしまいかねません。
さらに、築年数の経過とともに、物件の魅力が低下し、入居付けが難しくなるリスクも高まります。 新築物件に比べて内覧希望者が少なく、家賃を下げなければ入居者が見つからない、といった事態に陥る可能性もあります。 競合物件が多いエリアでは、築年数が古いというだけで敬遠され、空室率が上昇するリスクがあります。
収益性を比較する際のポイント

新築と中古、どちらがより収益性が高いかは、単に利回りだけでは判断できません。以下のポイントを総合的に比較検討することが重要です。
維持管理費用
物件の収益性を考える上で、維持管理費用は無視できません。新築は初期の修繕費が低いですが、築年数が経つにつれて徐々に増加していきます。一方、中古は購入当初から修繕費がかかる可能性があり、特に大規模修繕の時期が近い場合は、多額の費用が必要になることがあります。事前に修繕履歴や長期修繕計画を確認することが重要です。
将来的な売却価格
投資の出口戦略として、将来的な売却も視野に入れなければなりません。新築は築浅の時期に価値が大きく下落しますが、その後は緩やかな下落に落ち着く傾向があります。中古は、築年数が古いほど価値の下落幅は小さくなります。しかし、築古物件は金融機関からの融資がつきにくく、買い手が見つかりにくいというリスクも考慮しなければなりません。
入居者ニーズ
物件の収益性は、入居者のニーズをどれだけ満たしているかにも左右されます。新築は最新の設備やきれいな内装で入居者を惹きつけやすいです。一方、中古は、リノベーションやリフォームによって付加価値をつけ、入居者ニーズに応えることができます。例えば、単身者向けのワンルームをファミリー向けに間取り変更するなど、より柔軟な対応が可能です。
まとめ

新築と中古、どちらがより収益性が高いかという問いに、単純な答えはありません。新築は「安定志向型」の投資家に向いています。購入価格は高いものの、安定した家賃収入と低い修繕リスクで、長期的なキャッシュフローを重視する人には魅力的です。
一方、中古は「積極果敢型」の投資家向けです。購入価格を抑え、高い利回りを狙うことで、短期間での収益化や、キャピタルゲインを見込めます。重要なのは、ご自身の投資目的、資金力、リスク許容度を明確にし、それぞれの物件タイプの特性を十分に理解した上で、慎重に判断することです。
物件の立地、将来性、管理体制など、利回り以外の要素も多角的に検討し、ご自身の投資スタイルに合った物件を見つけることが、不動産投資成功への第一歩となるでしょう。