賃貸物件の入居率は設備に影響されやすいため、空室が続いている場合は、宅配ボックスを検討してみましょう。ネットショッピングの利用世帯も増加しているため、宅配ボックスは入居者にとっても付加価値の高い設備です。本記事では、宅配ボックスのメリットやデメリット、導入費用や注意点などを詳しく解説します。
宅配ボックス導入のメリット・デメリット

宅配ボックスは賃貸物件で人気の設備で、導入には多くのメリットがあります。賃貸経営にはおすすめの設備ですが、以下のデメリットもあるので、導入するかどうかは慎重に検討しましょう。
オーナーのメリット・デメリット
賃貸物件に宅配ボックスを導入する場合、オーナーには以下のメリットやデメリットがあります。
比較項目 | 宅配ボックスのメリット |
---|---|
成約率 | 賃貸物件の成約率が高くなる |
差別化 | 近隣物件と差別化できる |
収益性 | 家賃アップにつながる |
比較項目 | 宅配ボックスのデメリット |
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導入コスト | 導入費用がかかる |
維持管理 | 種類によっては維持費がかかる |
設置制限 | 狭小物件は設置できない場合がある |
入居者の多くは宅配ボックスを「必須設備」と捉えており、導入されている物件は成約率アップにつながります。近隣物件に宅配ボックスがない場合は、導入によって差別化を図れるでしょう。
宅配ボックスは入居者の利便性が高まるため、家賃を上乗せしやすくなります。ただし、宅配ボックスは導入費用がかかり、種類によっては毎月の維持費が発生します。エントランスが狭い物件など、設置スペースがない場合は導入が難しいでしょう。
入居者のメリット・デメリット
宅配ボックスを導入した場合、入居者には以下のメリット・デメリットがあります。
比較項目 | 入居者のメリット |
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利便性 | 留守中でも荷物を受け取れる |
効率性 | 再配達の手間がない |
安心感 | 不審者との接触リスクが低くなる |
比較項目 | 入居者のデメリット |
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操作性 | 暗証番号を忘れる可能性がある |
利用制限 | 利用率の高い物件はボックスに空きがない場合がある |
家賃負担 | 家賃が高くなる |
留守中の荷物は配送員が宅配ボックスに入れてくれるので、再配達の手間がありません。荷物を玄関先で受け取ると、不審者との接触や、感染リスクを減らせます。
ただし、入居者が暗証番号を忘れると、宅配ボックスから荷物を取り出せなくなります。宅配ボックスに空きがなければ、配達員が荷物を持ち帰るので、再配達が必要になるでしょう。家賃を上乗せする場合は、割高だと感じない程度にとどめる必要があります。
宅配ボックスの種類

賃貸物件用の宅配ボックスは、サイズや開錠方式によって種類が異なります。設置場所は一般的にエントランスや階段下ですが、物件によっては屋外設置になるケースもあります。宅配ボックスを導入する際には、まず以下の種類を把握しておきましょう。
宅配ボックスの開錠方式
宅配ボックスには機械式と電気式があり、以下のように開錠します。
開錠方式 | 使用方法 |
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機械式 |
1. 配達員が荷物を入れて施錠し、ボタンやダイヤルで暗証番号を設定 2. 入居者は不在票に記載された暗証番号でボックスを開錠 |
電気式 |
1. 配達員が入居者の部屋番号を入力してボックスを開錠 2. 荷物を入れると自動的に施錠 3. 入居者はあらかじめ設定した暗証番号の入力、またはカードキーで開錠 |
機械式の宅配ボックスは電力が必要ないため、維持費がかかりません。使用方法もわかりやすいので、入居者にも早く慣れてもらえるでしょう。電気式の宅配ボックスは電力を必要とし、監視サポートを受ける場合はインターネットの利用料金もかかります。設置後の維持費はかかりますが、第三者に開錠されるリスクがないので、セキュリティ重視の場合はおすすめです。
屋内設置と屋外設置
賃貸物件の共用部に十分なスペースがある場合、屋内用の宅配ボックスを設置できます。共用部が狭い、または共用部がない長屋タイプの物件であれば、屋外設置の宅配ボックスを検討しましょう。宅配ボックスを屋外に設置する場合は、防水性や耐久性を重視しましょう。
宅配ボックスの導入費用

宅配ボックスの導入費用は規模や素材、開錠方式などによって変わります。機械式は本体価格と設置費用のみですが、電気式の宅配ボックスは維持管理費用がかかります。導入費用や維持管理費用の相場は以下のようになるため、投資効果の判断材料にしてみましょう。
機械式の宅配ボックス
機械式の宅配ボックスを導入すると、50万〜70万円程度の費用がかかります。内訳は本体価格が40万~60万円程度(※)、設置費用が10万円程度です。
出典:株式会社 いい生活
小さな宅配ボックスは自分で設置できますが、規模が大きくなると重量が100kgを超えるため、搬入や設置は業者に任せたほうがよいでしょう。
電気式の宅配ボックス
電気式の宅配ボックスを設置する場合、導入費用が90万〜110万円程度かかります。内訳は本体価格は80万〜100万円程度(※)、設置費用が10万円程度ですが、配線工事の費用が別途必要です。
出典:株式会社 いい生活
宅配ボックスを導入する際のポイント

宅配ボックスを導入する際は、物件にマッチした必要個数や設置場所が重要です。一定要件を満たすと補助金を利用できるので、導入前に以下のポイントを理解しておくとよいでしょう。
設置数は全戸数の4割程度が目安
賃貸物件に宅配ボックスを導入する場合、設置数は全戸数の4割程度が目安です。ファミリー向けの物件は通販サイトの利用数が多くなりやすいので、全戸数の5割程度を設置する場合もあります。予算と設置スペースに余裕があれば、さまざまなサイズのボックスを組み合わせてみるとよいでしょう。
設置場所には入居者への配慮が必要
宅配ボックスを設置する際は、入居者への配慮が必要です。大きな宅配ボックスは入居者の通行を妨げてしまい、建物の利便性や快適性を損なう恐れがあります。
宅配ボックスの設置によって死角ができた場合、ストーカーなどの不審者に悪用されかねません。十分な設置スペースを確保できないときは、集合ポストと一体型の宅配ボックスを導入し、既存の集合ポストを撤去する方法も検討してみましょう。
宅配ボックス導入の注意点

宅配ボックスは便利な設備ですが、荷物によっては玄関先で受け取る必要があります。配達員がボックスを開けられないケースもあるので、以下の注意点をよく理解しておきましょう。
宅配ボックスを利用できない荷物がある
宅配ボックスには重量制限があるため、荷物の重さによっては利用できません。着払いの荷物や生鮮食品にも対応していないので、入居者が玄関先で受け取る場合があります。宅配ボックスで生鮮食品を受け取りたい場合は、冷蔵機能付きのタイプを検討してみましょう。
入居者が荷物を放置すると宅配ボックスを利用できない
入居者が通販サイトなどで買い物をした後、出張や旅行で不在になると、宅配ボックスの荷物が放置されます。空きがない宅配ボックスは利用できないため、別の入居者から苦情が出る恐れがあるでしょう。入居者には荷物を放置しないよう注意喚起し、改善されない場合は宅配ボックスの増設を検討する必要があります。
配送トラブルが発生する可能性がある
配達員が宅配ボックスの扱いに慣れていなかった場合、荷物を持ち帰ってしまうケースがあります。不在票に間違った暗証番号を記載すると、入居者は宅配ボックスを開錠できません。入居者が暗証番号を間違えたり、カードキーを失くしたりする可能性もあるので、配送トラブルの想定も必要です。宅配ボックスの開錠・施錠でトラブルが発生した際は、まずメーカーや管理会社に問い合わせましょう。
まとめ

ネットショッピングの利用者は年々増加しているため、宅配ボックスの需要は今後も高くなることが見込まれます。入居者によっては、宅配ボックスの設置が入居の決め手になるので、空室対策にも効果的です。物件にマッチした宅配ボックスを設置すると、費用対効果も高くなり、家賃を上乗せしても入居率を維持しやすくなります。近隣物件と差別化し、入居率や家賃を上げたい場合は、宅配ボックスの導入を検討してみましょう。