賃貸アパートやマンションは「無料インターネット」の物件が多く、入居者募集には欠かせない設備です。古いアパートやマンションにもおすすめの設備ですが、費用対効果や回線業者の選び方などがわからず、導入に踏み切れないオーナー様も多いのではないでしょうか。
本記事では、無料インターネットの導入効果や費用、回線の種類などをわかりやすく解説します。無料インターネットは入居者にとってもメリットが大きいので、空室対策に悩んでいるオーナー様はぜひ最後までお読みください。
無料インターネットの導入効果

無料インターネットを導入した場合、オーナー様と入居者それぞれにメリットがあります。入居者にとっては物件選びの決め手になりやすく、新築物件の多くは標準仕様です。具体的には以下の導入効果があり、入居率アップにつながります。
オーナーが得られる効果
賃貸物件に無料インターネットを導入すると、オーナー様は以下の効果を得られます。
導入効果の詳細- 成約率が向上する
- 長期間の入居につながる
- 不動産会社が積極的に紹介してくれる
- 家賃に上乗せできる
インターネットはすでに生活インフラになっているため、無料で使える物件は成約率の向上を期待できます。通信環境に不満がなければ、長期間の入居にもつながりやすいでしょう。
また、設備が充実している物件は入居が決まりやすいので、不動産会社が積極的に紹介してくれます。インターネットの利用料はオーナー様負担ですが、家賃に上乗せしても割高感がないため、収益向上も可能です。
入居者が得られる効果
無料インターネットの導入効果として、入居者は以下のメリットを得られます。
入居者のメリット- 入居直後からインターネットを使える
- プロバイダ契約の手続きが不要
- テレワークに対応できる
- 通信費を節約できる
入居者が自分でインターネットを導入する場合、プロバイダとの契約や回線工事などがあるため、利用開始までに一定期間が必要です。無料のインターネット環境が最初から整備されていると、オンライン学習やテレワーク、趣味の配信などが途切れません。インターネット利用料の負担もないので、入居者には通信費を節約できるメリットがあります。
賃貸に導入できるインターネット回線の種類

インターネット回線には無線と有線があり、特徴を理解すると、どちらにするのか決めやすくなります。線の特徴は使い勝手のよさですが、有線は安定性が高いので、以下のメリット・デメリットも理解しておくとよいでしょう。
無線接続
インターネットの無線接続は、共用部まで回線を引き込み、各部屋ではWi-Fiで利用する方式です。無線接続を導入する際は、以下のメリット・デメリットを比較検討してみましょう。
比較項目 | 無線のメリット |
---|---|
コスト | 有線に比べて初期費用や維持管理コストが安い |
工事範囲 | 工事は共用部分のみ |
工事期間 | 1日または数日で工事完了 |
居住空間 | 部屋がすっきりする |
比較項目 | 無線のデメリット |
---|---|
安定性 | 回線が不安定になりやすい |
速度 | 有線に比べて速度が遅い |
トラブル対応 | トラブルの原因を特定しにくい |
セキュリティ | 不正利用などのリスクが発生する |
無線接続のインターネットは工事の規模が小さく、短期間で施工できます。初期費用や維持管理コストが安いので、十分な投資効果を得られるでしょう。また、Wi-Fi接続はLANケーブルを使わないため、ネット接続の機器が増えても部屋はすっきりしたままです。
ただし、無線接続は電波の干渉を受けやすく、電子レンジなどの家電製品を使っている間は、回線が不安定になりやすいデメリットがあります。パソコンとルーターの距離も回線速度に影響しますが、物理的な配線がないので、トラブルの原因を特定しにくくなります。Wi-Fi接続は第三者に不正アクセスされる恐れがあるため、単純なパスワードを設定しないよう、入居者に呼びかけておきましょう。
有線接続
インターネットの有線接続とは、各部屋にインターネット回線を直接引き込み、LANケーブルでネットに接続する方式です。有線接続を導入する際は、以下のメリット・デメリットを把握しておきましょう。
比較項目 | 有線のメリット |
---|---|
安定性 | 回線が安定しやすい |
速度 | 無線に比べて速度が速い |
設定 | ネット接続の設定がわかりやすい |
セキュリティ | セキュリティが高い |
トラブル対応 | トラブルの原因を特定しやすい |
比較項目 | 有線のデメリット |
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工事 | 工事には入居者の立ち会いが必要 |
工事費用 | 工事費用が高くなる |
工事期間 | 回線の引き込み工事に1カ月以上かかる場合がある |
対応機器 | 有線接続できない機器がある |
LANケーブル | LANケーブルが邪魔になることもあります |
回線の安定性や通信速度、セキュリティの高さを重視する場合は、有線接続がおすすめです。不正アクセスのリスクも低く、ネット接続の設定もわかりやすいので、有線接続を好む入居者もいます。
ただし、各部屋に光ケーブルなどを引き込むため、入居者の立ち会いが必要です。工事業者や入居者の都合によっては、開通までに1カ月以上かかる場合があるでしょう。スマートフォンやタブレットはLANポートがないので、有線インターネットを利用する際は、入居者に変換用アダプターを購入してもらう必要があります。
インターネット無料を導入する流れ

インターネット無料を導入する場合、利用開始までの流れは以下のようになります。
導入の5ステップ- 回線業者やプロバイダの選定
- 賃貸物件の事前調査
- インターネット回線の利用契約
- 工事日程の決定と入居者への告知
- インターネット回線の引き込み工事
利用契約を交わした後は簡単に業者を変えられないため、最初のステップが重要です。回線業者の選定など、詳しい内容は以下を参考にしてみてください。
①回線業者やプロバイダの選定
賃貸物件に無料インターネットを導入する際は、まず回線業者とプロバイダを選定します。回線業者には「NTT東・西」や「au」などがあり、物理的なインターネット回線を提供しています。
プロバイダは「インターネットサービスプロバイダ」とも呼ばれており、インターネットへの接続サービスを提供する業者です。どちらもインターネットの導入に必要ですが、業者や料金プランなどの種類が多いので、迷ったときは以下の判断基準を参考にしてみてください。
選定基準- 回線の種類(無線や有線)
- 回線の速度
- 初期費用と月額料金
- セキュリティの高さ
- オプションサービス
- サポート体制
光回線のインターネットはギガビット毎秒が主流になっているため、大量のデータを送受信してもストレスなく利用できます。業者を比較しても導入コストに大きな差がなければ、防犯カメラなどのオプションサービスや、24時間サポートを重視してもよいでしょう。
②賃貸物件の事前調査
回線業者を選定したら、引き込み工事が可能かどうか調査してもらいましょう。賃貸物件の構造によってはインターネットを導入できない、または工事が複雑になる場合があります。有線接続を予定していても工事が難しい場合は、無線接続に変更することもあります。
③インターネット回線の利用契約
インターネットの導入に問題がなければ、回線業者やプロバイダと利用契約を結びます。全戸加入などの契約書は項目が多いので、わかりにくい部分は必ず質問しましょう。たとえば、ルーターなどの機器類は一般的に買取ですが、オーナー様がレンタルだと誤解してしまうケースがあります。買い取った機器類に業者側の管理責任はないので、免責事項も必ず確認しておきましょう。
④工事日程の決定と入居者への告知
回線工事の日程が決まったら、入居者に書面で告知しましょう。入居者が自分でインターネットを契約しており、オーナー様が準備した回線に乗り換えるケースもあるため、工事日の1カ月前までには告知が必要です。各戸に回線を引き込む際は、入居者に立会い可能な日時を確認しましょう。
⑤インターネット回線の引き込み工事
賃貸物件にインターネット回線を引き込む場合、1〜2時間程度の工事が必要です。有線接続の場合は、エアコンのダクトや電話線の配管などにネット回線を通すため、工事に2時間以上かかる可能性があります。
工事完了後は接続テストを行いますが、業者側の専用端末を使用するので、入居者がパソコンなどを準備する必要はありません。
インターネット無料を導入する際の注意点

無料インターネットは入居率アップを期待できますが、初期費用などの負担も考慮する必要があります。回線の品質によってはトラブルに発展する恐れがあるので、以下の注意点をよく理解しておきましょう。
初期費用がかかる
初期費用は工事の規模などによって変わりますが、相場は1戸あたり6万円程度です。1棟10戸の場合は最低でも60万円程度の費用がかかるので、不足がないように予算を準備しておきましょう。
出典:株式会社 カカクコム
維持管理コストが必要
インターネット無料を導入した場合、毎月の利用料金が維持管理コストに含まれます。一般的な相場は1戸あたり3,000~5,000円程度になるため、家賃アップの検討も必要です。
なお、利用戸数が多くなると、割引料金が適用される場合があるので、料金プランもよく確認しておきましょう。
低品質なインターネット回線はトラブルになりやすい
インターネット無料を導入する場合は、必ず回線品質にこだわってください。回線が頻繁に途切れたり、低速な状態が続いたりすると、入居者はテレワークやオンライン学習などを利用できない恐れがあります。
低品質な回線は空室増加の原因になりかねないため、ネット上の口コミなどを参考に、評価の高い業者を選びましょう。
回線業者やプロバイダのサポート体制を確認する
回線業者やプロバイダを選ぶ際は、サポート体制の確認が必要です。インターネットの利用時間は入居者によって異なるため、基本的には24時間サポートの業者をおすすめします。
また、電話はつながりにくい時間外があるので、チャットの問い合わせができるかどうかも確認してみてください。
まとめ
無料インターネットは入居者にとっても魅力的な設備であり、有効な空室対策にもなります。ただし、回線品質が低いと通信が途切れたり、速度が遅くなったりするため、クレームに発展する可能性もあります。
無料インターネットを導入する際は、回線品質や業者のサポート体制を十分にチェックし、費用対効果も計算しておきましょう。安定かつ高速なインターネット回線を導入できれば、長期的な入居を期待できます。