「アパート経営は不労所得で安定収入を得られる」というイメージを持つ人は多いでしょう。しかし実際には、立地の悪さや空室リスク、資金計画の甘さなどが原因で赤字経営に陥り、手放さざるを得ないケースも少なくありません。
本記事では、アパート経営でよくある失敗原因を体系的に整理し、それぞれのリスクを回避するための具体的な対策を解説します。
目次
アパート経営でよくある失敗原因

アパート経営で失敗する背景には共通するパターンがあります。ここでは代表的な10の要因を掘り下げて解説します。
立地選定ミス(需要不足・利便性の低さ)
不動産投資の成否を最も左右するのが立地です。駅から遠い、周辺にスーパーや大学などの需要源がない、治安が悪いといった条件では、入居希望者が集まりにくくなります。結果として慢性的な空室が続き、家賃を下げざるを得なくなります。
成功事例を見ると、多くは「徒歩10分圏内」「人口増加エリア」「生活利便性が高い地域」に集中しています。
借入過多と資金計画不足(返済負担が経営を圧迫)
融資を受ければ誰でもアパートを建てられますが、借入額が過大だと返済が経営を圧迫します。
特に家賃収入に対する返済比率(返済額÷家賃収入)が高すぎると、金利上昇や空室率増加に耐えられなくなります。指標として、返済比率は30〜40%以内、自己資金は物件価格の2〜3割を用意するのが安心です。
収支シミュレーションの甘さ
新築時の満室想定だけで収支を組むと危険です。築10年を過ぎれば家賃は1〜2割下落するのが一般的で、空室率も上がります。
さらに修繕費(外壁・屋根・水回り)は想定以上にかかりやすく、積立が不足していると突発的に数百万円単位の支出が発生します。空室率を10%程度、修繕積立を家賃収入の5〜10%と見込んで計画を立てることが重要です。
設備投資の過不足
入居促進につながる設備投資は効果的ですが、やりすぎは禁物です。無料Wi-Fiや宅配ボックス、オートロックなどは比較的低コストで需要が高い設備ですが、豪華な内装や過剰なリフォームは投資回収が難しくなります。
逆に必要最低限の投資すら怠ると、競合物件に見劣りして入居率が下がります。
管理体制の不備・管理会社選定ミス
自主管理でコストを抑えるケースもありますが、入居者対応や夜間トラブル対応が不十分になりやすく、評判が悪化して空室につながります。
一方で管理会社に丸投げしても、質の低い会社だと入居者対応が雑でトラブルが増えることもめずらしくありません。管理会社は複数見積を取り、対応品質や報告体制を比較して選びましょう。
サブリース依存のリスク
「家賃保証」をうたうサブリース契約は一見安心ですが、契約内容をよく見ると「家賃減額条項」があり、数年後に保証額が下がります。さらに契約解除のリスクもあるため注意が必要です。
サブリースは短期的な空室対策としては有効ですが、長期安定経営を前提に頼りすぎるのは危険です。
節税目的だけの経営スタート
相続税対策としてアパートを建てるケースは多いですが、節税効果ばかりを優先して収支構造を無視すると赤字経営に陥ります。
税金は確かに抑えられても、毎月のキャッシュフローが赤字では意味がありません。収益性と税制優遇の両方をバランス良く考慮する必要があります。
出口戦略の欠如
アパート経営は「出口戦略」を意識して始めることが重要です。
築年数が経過すると資産価値は下落し、ローン残債が売却価格を上回る「オーバーローン」に陥ることもあります。購入時点で「いつ売却するか」「賃料収入で回すか」をシミュレーションし、出口戦略を描いておくことが成功の鍵です。
入居者トラブル対応の不備
家賃滞納や騒音、ゴミ問題を放置すると、ほかの入居者が連鎖的に退去し、物件全体の稼働率が下がります。入居審査の強化や保証会社の利用、トラブル発生時の迅速な対応が求められます。
災害・法令リスクへの備え不足
水害や地震に対する保険加入、耐震補強を怠ると、災害時に大きな損失を被ります。
また、建築基準法や用途地域の制約を確認せずに建てた場合、将来的に規制強化で「違反建築」扱いになることも。投資前に災害リスクと法令リスクは必ず確認すべきポイントです。
アパート経営で失敗しないための回避策

失敗の要因を踏まえたうえで、事前に次の対策を講じることでリスクを大幅に軽減できます。
立地調査の徹底
物件の立地は入居率を決定づける最重要ポイントです。人口動態の推移、大学や工場の移転予定、将来の再開発計画などを調べ、今後10年以上安定した需要が見込めるかを確認しましょう。
周辺家賃相場と比較しても需要の強さを測ることができます。
資金計画の堅実化
アパート経営における最大の失敗要因は資金ショートです。
返済比率は家賃収入の30〜40%以内に収め、自己資金を2〜3割は用意するのが安心です。修繕や空室を想定し、余裕を持った資金計画を立てることが赤字経営を防ぐカギになります。
修繕積立の確保
築年数が経過すると外壁や水回りなど大規模修繕が必ず発生します。これを怠ると資産価値の低下につながり、入居率も下がります。
家賃収入の5〜10%を目安に修繕積立を行い、長期修繕計画を立てて計画的に対応することが重要です。
管理会社の精査
入居者対応やトラブル処理は管理会社の力量に大きく左右されます。複数社から見積もりを取り、報告体制や対応品質を比較検討しましょう。
安さだけで選ぶとサービスが粗く、逆に空室率が上がるリスクがあるため注意が必要です。
サブリースの慎重利用
家賃保証が魅力のサブリース契約ですが、多くの場合「保証賃料の減額条項」が含まれています。短期的なリスク回避には役立ちますが、長期的には収益性を下げることも。
契約前に必ず条項を確認し、必要以上に依存しないことが大切です。
出口戦略の設定
購入時から「いつ売却するか」「賃貸経営を続けるか」をシミュレーションしておくことが必要です。築年数が経てば資産価値は必ず下がるため、売却益を狙うのか、賃料収入を長期的に得るのかを明確にしておきましょう。
リスク分散の実施
自然災害や地震リスクは避けられません。火災保険・地震保険への加入や耐震補強の検討、さらにエリアを分散した投資も有効です。
ひとつの物件・地域に依存しすぎると、災害や経済変動で一気に収益が悪化する危険があります。
まとめ|アパート経営は「準備力」と「リスク管理」が成功の鍵

アパート経営は魅力的な投資手段ですが、失敗のリスクも高いのが現実です。成功するかどうかは、購入前の準備と継続的なリスク管理にかかっています。
節税やサブリースといった甘い言葉に惑わされず、堅実な経営を心がけましょう。